なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧
「未来帝国ローマ」 I Guerrieri dell'anno 2072 (1983)

製作:マウリツィオ・アマティ
サンドロ・アマティ
製作総指揮:エドモンド・アマティ
原案:ダルダノ・サケッティ
エリサ・ブリガンティ
脚本:ダルダノ・サケッティ
エリサ・ブリガンティ
チェザーレ・フルゴーニ
ルチオ・フルチ
撮影:ジュゼッペ・ピノーリ
スタント:セルジオ・ミオーニ
特殊効果:アルヴァロ・パッセリ
音楽:リズ・オルトラーニ
出演:ジャレッド・マーティン
フレッド・ウィリアムソン
クラウディオ・カッシネッリ
ハワード・ロス(レナート・ロッシーニ)
エレオノラ・ブリアドーリ
コシモ・チニエリ
ジョヴァンニ・ディ・ベネデット
ヴァレリア・カヴァッリ
ドナルド・オブライエン
アル・クライヴァー(ピエルルイジ・コンティ)
マリオ・ノヴェッリ
ハルヒコ・ヤマノウチ
マッテオ・コルシーニ
シンツィア・モンレアーレ
イタリア映画/94分/カラー作品
イタリアン・ホラーの巨匠ルチオ・フルチが手掛けた、恐らく唯一の本格的なSFアクション映画である。もともと大衆コメディの監督として頭角を現し、西部劇からスパイアクション、猟奇サスペンスからソフトポルノまで多彩なジャンルを手掛けたフルチだが、しかしいわゆるSFジャンルとは殆ど縁がなかった。その最大の理由は、フルチ自身がSFの世界にそれほど興味がなかったから。本作は映画会社との契約を履行するために引き受けた企画だったらしく、実のところフルチ本人もあまり気乗りがしなかったという。その題材に対する関心の薄さは本編を見ても一目瞭然であろう。
舞台は西暦2072年のイタリアはローマ。アメリカのテレビ局が制作する番組「キル・バイク」は、選り抜きのバイクレーサーたちが命がけのデスレースを繰り広げるという過激な内容が受け、イタリアを含む世界各国で驚異的な視聴率を稼ぎ出していた。その看板スターが、連戦連勝を誇る天才レーサーのドレイク(ジャレッド・マーティン)。ハリウッド女優スーザン(ヴァレリア・カヴァッリ)と結婚したドレイクは、今まさに我が世の春を謳歌していた。そんな「キル・バイク」の成功を苦々しく思っているのが、イタリアの大手テレビ局WBSのプロデューサー、コルテス(クラウディオ・カッシネッリ)。WBSでも「キル・バイク」に対抗して、一般参加者が死の恐怖を疑似体験する残酷シミュレーション番組「デンジャー・ゲーム」を放送しているが、本当に死ぬわけではないため視聴率は伸び悩んでいた。そこでWBS社長サム(ジョヴァンニ・ディ・ベネデット)が提案したのは、古代イタリアの元祖デスゲーム「剣闘士競技」をローマのコロッセウムで復活させること。世界各国から20名の死刑囚を集めて殺し合いをさせ、最後まで生き残った者には恩赦が与えられる。これを全世界同時に中継すれば大ヒット間違いなしだ。しかし番組をプロモーションするためには、「キル・バイク」のドレイクに匹敵するような看板スターが必要だった。
そんな折、ローマにあるドレイクの自宅が3人組の暴漢に襲撃され、たまたまひとりで在宅だった妻スーザンが殺されてしまう。直後に駆け付けたドレイクは、犯人を皆殺しにしたとして死刑判決を受ける。これはもっけの幸いとばかり、ドレイクを剣闘士競技の看板スターとして起用するコルテス。ほかにも、アフリカ系アメリカ人のイスラム過激派アブダル(フレッド・ウィリアムソン)やドイツ人テロリストのカーク(ピエルルイジ・コンティ)、モンゴル人の殺し屋アキラ(ハルヒコ・ヤマノウチ)などの死刑囚たちが集められていた。彼らをゲーム本番まで管理するのはサディスティックな看守レイヴン(レナート・ロッシーニ)。彼は死刑囚たちの殺人衝動を最高レベルに引き上げるため、彼らの憎悪感情を引き出すバーチャル・テストを行っていた。ところが、自分が無実であることを主張するドレイクは、どれだけ過酷なテストを行っても自らの殺人衝動をコントロールして抑えてしまう。
これに驚いたのがコルテスの助手であるサラ(エレオノラ・ブリアドーリ)。ここまで強靭な精神力を持つドレイクが、本当に3人組の暴漢を衝動的に殺したのだろうか。強い疑問を抱いた彼女は、WBSの誇る人工知能「ジュピター」を使って真相を調べ始める。すると、そもそもドレイクの妻が殺された事件自体が予め計画されたもので、実際に3人組の暴漢を殺害したのは防犯カメラに映らない4人目の人物だったこと、さらにこの計画を仕組んだのが「ジュピター」だったことを知る。そこで彼女は、「ジュピター」の開発者であるトーマン教授(コシンモ・チニエリ)の居場所を突き止めて問いただしたところ、「ジュピター」にはもともと善悪を自ら判断する機能が備わっている、人間が意図的にプログラムを書き換えない限りそんなことはしないと言われる。その直後にトーマン教授は殺害され、サラは謎の黒幕による陰謀を確信する。その頃、剣闘士の訓練所で旧友モンク(ドナルド・オブライエン)と再会したドレイクは、彼から脱走計画を持ち掛けられるのだが、何者かの密告によってバレてしまう…。
抑圧的な全体主義社会で一般大衆が暴力をエンターテインメントとして消費するという近未来像が、『華麗なる殺人』('75)や『ローラーボール』('75)などを彷彿とさせる作品。当時は『マッドマックス2』('81)や『ニューヨーク1997』('81)が大ヒットしたことで、イタリアではその柳の下の泥鰌を狙った『ブロンクス・ウォリアーズ/1990年の戦士』('82)や『マッド・ファイター』('83)、『サイボーグ・ハンター/ニューヨーク2019年』('83)などの終末SFアクションが大量生産されていたが、本作もそのブームに便乗した企画であったことは想像に難くないだろう。ビジュアル的にも『マッドマックス2』や『ニューヨーク1997』、『ブレードランナー』('82)などの影響が明らかに見て取れる。
さらに言えば、無実の罪を着せられた主人公が、死刑囚に殺し合いをさせるテレビのデスゲーム番組に参加するというコンセプトは、'82年に出版されたスティーブン・キングの同名小説を映画化したアーノルド・シュワルツェネッガー主演の『バトルランナー』('87)にソックリである。そんな本作の脚本を書いたのはダルダノ・サケッティとその妻エリサ・ブリガンティ。もともとのオリジナル脚本に殺人事件の要素はなく、もっと純粋なSFアクション映画になるはずだったのだが、フルチと『ドクター・モリスの島/フィッシュマン』('79)のチェザーレ・フルゴーニが勝手に書き直したらしい。『サンゲリア』('79)以来一緒に仕事をしてきたサケッティとフルチは、これがきっかけで袂を分かってしまう。そのサケッティ曰く「ハリウッドが我々の脚本をパクった」とのことだが、確かに主人公が無実の罪で投獄されたり、凶悪犯をデスゲーム番組に出演させるという本作と類似した設定は、キングの原作小説にはない映画版独自の要素ゆえ、映画『バトルランナー』が本作をヒントにしたという可能性も否定はできない。とはいえ、本作がアメリカでは劇場未公開ということを考えると、まあ、少なからず疑問は残るのだけれど。
いずれにせよ、先述した通り当時の終末SFアクション映画ブームに便乗しただけの作品で、なおかつフルチ監督自身も特に思い入れのない企画だっただけあって、全編に漂う「やる気のなさ」は如何ともし難いものがあると言えよう。特にアクション・シーン。『ベン・ハー』('59)さながらの二輪車バイクを駆使したバトルレースなど趣向は凝らしているものの、ダラダラとしたスタントやカメラワークからはスリルも迫力も感じられない。撮影監督はタヴィアーニ兄弟やヴァレンティノ・オルシーニなど作家映画出身のジュセッペ・ピノーリ、第2班撮影監督はフェリーニやヴィスコンティ、ロッセリーニなど巨匠とのコラボで有名なベテラン大御所アルド・トンティ。どちらもこの手のアクション映画とは縁の薄いカメラマンだ。
その一方で、伝統とハイテクが混在する近未来都市ローマを再現したミニチュア特撮などは、その手作り感覚満載の安っぽさが今となっては逆に魅力的でもある。当時はイタリア産B級娯楽映画が急速に衰退していた時代。確かに同時代のハリウッド映画と比べてもチープなことこの上なしだが、しかし当時のイタリア映画界ではこれでもそれなりの大作だったという。恐らくフルチにとっても、まともな予算が与えられたのはこの辺りが最後ではないだろうか。そういう意味でも、少なからず感慨深いものがある映画だ。
主演は当時テレビシリーズ『ダラス』('78~'91)でブレイクしたばかりのハリウッド俳優ジャレッド・マーティン。フルチとは「エニグマ怒霊界」('88)でも組んでいる。共演は'70年代ブラックスプロイテーション映画の人気スターで、『地獄のバスターズ』('78)以降はイタリアでも活躍したフレッド・ウィリアムソン。当時はイタリア産終末SFアクション映画でも引っ張りだこだった。そのほか、セルジオ・マルティーノ監督作品の常連だった名優クラウディオ・カッシネッリ、マカロニ西部劇の悪役出身だったハワード・ロスことレナート・ロッシーニ、『サンゲリア」以降フルチ作品の常連となったアル・クライヴァーことピエルルイジ・コンティ、ジョー・ダマート作品の常連だった英国人俳優ドナルド・オブライエン、'80年代のイタリア産アクションには欠かせない日本人俳優ハルヒコ・ヤマノウチなど、イタリア映画マニアにはお馴染みのカルト・スターたちが総出演。ヒロインのサラを演じているエレオノラ・ブリアドーリ(別名エレノア・ゴールド)は、当時テレビのバラエティ番組で人気の美人タレントだったらしい。また、『ビヨンド』('81)のミステリアス美女エミリー役で知られる女優サラ・ケラーことシンツィア・モンレアーレが、残酷シミュレーション番組「デンジャー・ゲーム」の出場者役で顔を出している。
日本では'80年代にレンタル用ビデオとして発売されたきりの本作。アメリカでも20年近く前にトロマ・ビデオから「The New Gladiators」のタイトルで出た、VHSソースの著作権的にグレーなDVDが最後だったが、'21年になってSeverin Filmsからデジタル・リマスターされた正規版ブルーレイがめでたくリリースされている。'80年代特有のソフトフォーカスを効かせまくった本編映像は、期待したほどの高画質というわけではないものの、それでも歴代ベストのハイクオリティであることは間違いないだろう。特典もスタッフやキャストの最新インタビューが盛りだくさん。中でもファンにとって興味深いのは、'89~'91年にかけて録音された生前のフルチ監督のインタビュー音声であろう。なるほど噂には聞いていたものの、インタビュアーに話の途中で割り込むことを許さず、一方的にまくしたてるフルチ監督のアグレッシブなこと!もはやケンカ腰で怒鳴っているようにしか聞こえません(笑)。発言内容もかなり強気で毒舌。そりゃまあソリの合わない人もいただろうな…。
評価(5点満点):★★★☆☆
参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)※サントラCD付き
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/1080p/音声:2.0ch DTS-HD Master Audio/言語:英語/字幕:英語/地域コード:A/時間:94分/発売元:Severin Films
特典:ルチオ・フルチの音声インタビュー('89~'91年・約11分)/脚本家ダルダノ・サケッティのインタビュー('21年制作・約16分)/俳優ハワード・ロスのインタビュー('21年制作・約18分)/俳優アル・クライヴァーのインタビュー('21年制作・約12分)/娘アントネッラ・フルチのインタビュー('21年制作・約19分)/撮影監督ジュゼッペ・ピノーリのインタビュー('21年制作・約17分)/女優シンツィア・モンレアーレのインタビュー('21年制作・約8分)/オリジナル劇場予告編
by nakachan1045
| 2022-01-23 00:58
| 映画
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