なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧
「SFダンジョン・マスター/魔界からの脱出」 The Dungeonmaster (1985)



主人公は天才的なコンピューター技師ポール・ブラッドフォード(ジェフリー・バイロン)。自らプログラミングした人工知能「カル」を用いて、先進的なハイテクライフを満喫するポールだったが、しかし同居するガールフレンドのグウェン(レスリー・ウィング)は、彼の生活がコンピューター中心で回っていることに不満を持っていた。それゆえ、ポールからプロポーズをされても素直に受け止めきれない。その晩、就寝していたポールがハッと目覚めると、見たこともない異次元へと引きずり込まれていた。すると、ポールの目に前に魔術師メステマ(リチャード・モル)が現れる。グウェンはミステマの人質となっていた。強大なマジックパワーを持つ魔術師ミステマは、現代のマジックであるハイテク技術との対決を望んでおり、ポールはその対戦相手に選ばれたのだ。グウェンを助けたければミステマの用意した7つの試練にチャレンジし、人工知能「カル」を使ってひとつづつクリアしなくてはならなかった。メステマの魔術によって服装を変えられ、左腕に小型タブレット化した「カル」を装着したポールは、その挑戦を受けて立つことになる。

「Ice Gallery」(監督:ローズマリー・ターク)
まずポールとグウェンが迷い込んだのは、氷と雪で覆われた魔術師メステマのアイス・ギャラリー。ここには切り裂きジャックからサムライ、狼男まで、メステマが集めて来た古今東西の悪人たちが冷凍状態で陳列されている。なぜかアインシュタインまで鎮座しているのだが、それってやはり原子爆弾を開発したからなのか…?とまあ、それはともかく、やがてメステマの魔術により気温が上昇し、凶暴な悪人たちが息を吹き返してしまう。切り裂きジャックに捕まったグウェン。果たしてポールはどうするのか!?…というセグメント。なんというか、『ワックスワーク』('88)のショートバージョンといった感じだ。

「Demons of the Dead」(監督:ジョン・カール・ビュークラー)
ポールが意識を取り戻すと、そこはゾンビがうごめく黄泉の国。小さな悪魔ラットスピットと対峙したポールは、ラットスピットに魂を奪われたゾンビたちと戦わねばならなくなる。特殊メイクマンであるジョン・カール・ビュークラーが演出を担当しているだけあって、見どころは『グーリーズ』('85)っぽい悪魔ラットスピットのクリーチャー・エフェクト。どこかユーモラスで憎めないアニマトロニクスのデザインがビュークラーらしい。なんとなく『スペースインベーダー』('86)のエイリアンにも似ている。

「Heavy Metal」(監督:チャールズ・バンド)
ロックが大嫌いな魔術師メステマによってポールが送り込まれたのは、邪悪なヘビメタバンド「W.A.S.P.」が大音量でガンガンに演奏する地獄のライブハウス。よく見るとグウェンがステージ上で拘束されており、リードボーカリストのブラッキー・ローレスが今まさに彼女を殺そうとしていた…!という、チャールズ・バンド御大自身が演出を手掛けた、ミュージック・クリップもどきのセグメント。劇中には本物のW.A.S.P.が登場し、ファーストアルバム収録曲「トーメンター」を演奏している。この曲は同じくエンパイア・ピクチャーズが製作したSFホラー『テラービジョン』('86)でも使われていた。

「Stone Canyon Giant」(監督:デヴィッド・アレン)
今度は東南アジア風の寺院がそびえ立つ場所へと迷い込んだポール。すると、巨大な石像がゆっくりと動き出し、額に埋め込まれた赤い石からビームを発射してポールに襲いかかる。チャールズ・バンドとは『SFレーザーブラスト』('78)や『ドールズ』('86)などでも組んだ特撮マン、デヴィッド・アレンが、敬愛する大先輩レイ・ハリーハウゼンへオマージュを捧げたセグメント。ストップモーション・アニメで動く巨大な石像は、『アルゴ探検隊の大冒険』('63)に出てくるタロスの再現ですな。'85年当時にしては古めかしい特撮ではあるものの、古き良きファンタジー映画の醍醐味を味わえるのは嬉しい。

「Slasher」(監督:スティーヴン・フォード)
若い女性ばかりを狙った連続殺人鬼スラッシャー(ダニー・ディック)が徘徊する現代のロサンゼルス。スラッシャーの次なるターゲットがグウェンだと知ったポールは、ダンスのオーディション会場へ向かう彼女を救おうとするものの、通りがかったパトカーに不審者として逮捕されてしまう。第38代アメリカ大統領ジェラルド・フォードの息子で、『恋人たちの予感』('89)や『スターシップ・トゥルーパーズ』('97)にも出ていた俳優スティーヴン・フォードの唯一の監督作。どうやら、主演俳優ジェフリー・バイロンの友達だった関係で起用されたらし。当時のスラッシャー映画ブームにあやかったのあろうが、これといった見せ場のない凡庸な出来栄え。

「Cave Beast」(監督:ピーター・マヌージアン)
助けを求めるグウェンの声に誘われ、見るからに怪しげな洞窟へと足を踏み入れたポールに、待ち伏せをしていた魔物が襲いかかる。といっても、石の投げ合いみたいなことするだけなんだけれどね(笑)。『ギャラクシー・オブ・テラー』('81)や『メタルストーム』('83)の助監督だったピーター・マヌージアンの監督デビュー作。なんだか民話風の小噺みたいなセグメントで、後味もちょっぴり切なかったりする。マヌージアン監督はこれ以降、チャールズ・バンドの製作で『エリミネーターズ』('86)や『アリーナ』('89)などのカルト映画を手掛けていくことになる。

「Desert Pursuit」(監督:テッド・ニコラウ)
最後は核戦争後の終末世界へと転送されたポールとグウェンは、装甲車を乗り回して砂漠の盗賊たちと激しいカーチェイスを繰り広げることになる。これはまんま『マッドマックス2』('81)のコピーですな。劇中で使用される手作り感覚満載な装甲車も、チャールズ・バンドが監督したなんちゃってマッドマックス映画『メタルストーム』のスタントカーを衣替えしただけ。そういえば、ポール役のジェフリー・バイロンは『メタルストーム』の主演スターだった。もともとチャールズ・バンド門下生の映画編集者だったテッド・ニコラウは、これが監督デビュー作。後にバンドがフルムーン・エンターテインメントを設立すると、ゴシック・ヴァンパイア映画の傑作『サブスピーシーズ』シリーズで高い評価を得る。

で、最後は7つの試練を乗り越えたポールが、いよいよ魔術師メステマと一騎打ちを繰り広げることになる。もともと「Ragewar」というタイトルで製作されたものの、劇場公開直前になって「The Dungeonmaster」へと変更された本作。7名の監督が7つのセグメントを手掛けるアンソロジー形式となったのは、ある程度まとまった製作資金が準備できるたびに撮影する…を繰り返していたためだったらしく、最終的に完成するまで1年以上を要したのだそうだ。興味深いのは、途中で出てくるドラゴン対決のアニメーションを、あのディズニー映画の特殊効果部門が手掛けていること。エンパイアとディズニーのコラボレーションというのも珍しい。とりあえず全編を通してマック・アールバーグが撮影監督を担当しているため統一感はあるものの、それでも各セグメントの出来不出来にバラツキがあることは否めないだろう。決して出来の良い映画とは言えないが、肩の凝らないB級エンターテインメントとして暇つぶしに見るくらいなら十分だろう。

主演のジェフリー・バイロンは先述したように、チャールズ・バンド監督の終末アクション映画『メタルストーム』に主演した俳優。フリッツ・ラングの名作『死刑執行人もまた死す』('43)などで知られる往年のスター女優アンナ・リーの息子だ。その恋人グウェン役のレスリー・ウィングは、『ハイスクール・ミュージカル』('06)シリーズでザック・エフロンの母親役を演じていた女優さん。『フラッシュダンス』('83)の主役オーディションで最終選考まで残った人だけあって、本作では華麗なエアロビダンスも披露している。そして、魔術師メステマ役には『ガバリン』('85)のビッグ・ベン役で有名な怪優リチャード・モル。彼も『メタルストーム』に悪役で出ていた。

評価(5点満点):★★★☆☆
参考DVD情報(アメリカ盤)※2枚組「4 All Night Horror Marathon Volume Two」収録
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/音声:2.0ch Dolby Digital Mono/言語:英語/字幕:なし/地域コード:1/時間:76分/発売元:Scream Factory/MGM
特典:オリジナル劇場予告編
by nakachan1045
| 2022-01-26 01:45
| 映画
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