なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧
「Petals on the Wind」 (2014)

製作:リチャード・D・アレドンド
カイル・クラーク
リナ・ウォン
原作:V・C・アンドリュース
脚本:ケイラ・アルパート
撮影:アナスタス・ミコス
音楽:マリオ・グリゴロフ
出演:ヘザー・グレアム
エレン・バースティン
ローズ・マクアイヴァー
ワイアット・ナッシュ
ベイリー・バンテイン(ベイリー・デ・ヤング)
ニック・シアシー
ディラン・ブルース
ウィル・ケンプ
ホイットニー・ホイ
イライア・イングリッシュ
アメリカ映画/88分/カラー作品


前作のラストから10年後の1970年。フォックスワース・ホールから脱出したキャシー(ローズ・マクアイヴァー)、クリス(ワイアット・ナッシュ)、キャリー(ベイリー・デ・ヤング)の兄妹は、サウス・カロライナで裕福な心優しい医師ポール・シェフィールド氏に引き取られ、キャシーはバレリーナ、クリスは医大生、キャリーは全寮制女子高と、それぞれの道を歩んでいた。その恩人シェフィールド氏が亡くなり、悲しみに暮れる3人だったが、それでも広い邸宅と財産を相続した彼らには、再び路頭に迷うような心配はない。とはいえ、かつて実の母親や祖母から虐待され殺されかけたこと、大切な弟コリーを失ったことのトラウマは今も彼らを苦しませていた。一方、ヴァージニア州でも有数の大富豪である実家の後継者となり、亡き祖父の元秘書バート(ディラン・ブルース)と再婚した母親コリーン(ヘザー・グレアム)は、忌まわしい記憶の残るフォックスワース・ホールの改装工事に着手する。高齢の祖母オリヴィア(エレン・バースティン)は寝たきりの生活となり、それでも家の中を取り仕切ろうとしていたが、しかしそんな実の母親をコリーンは虐待するようになっていた。

そんなある日、キャシーはバレエ学校校長の息子ジュリアン(ウィル・ケンプ)と知り合う。ニューヨークの名門バレエ団でプリンシパルとして活躍するジュリアンは、キャシーの美貌に惹かれて彼女をニューヨークへ誘う。バレエ団では次回作「ロミオとジュリエット」のジュリエット役を無名の新人から公募している、団長は看板スターである僕の言いなりだから推薦してあげるよ。そう言われて心動かされるキャシー。どこか危険な魅力を漂わせるジュリアンにも惹かれるものがあった。ニューヨーク行きを決意するキャシーだったが、それを知った兄クリスは猛反対する。かつて屋根裏部屋で結ばれてしまった実の兄と妹。クリスは今でもキャシーのことを、妹としてではなく異性として愛していたのだ。キャシーも同じ気持ちではあったが、しかし近親相姦の関係に幸福な未来などない。兄を心から愛しているからこそ、相応しいパートナーを探して欲しい。私も同じようにする。そう言い残してキャシーはニューヨークへと旅立つ。

ほどなくしてクリスにも出会いが訪れる。研修医として勤務する病院の院長リーヴス医師(ニック・シアシー)の愛娘サラ(ホイットニー・ホイ)だ。辛くて暗い過去を抱えたクリスにとって、苦労を知らない素直で純粋なお嬢様サラは眩しい存在。サラもどこか陰のある寡黙な美青年クリスに心惹かれる。おのずと2人はデートを重ねるようになったが、しかしキャシーへの想いを断ち切れないクリスは、サラとの関係を深めることに躊躇もあった。一方、成長期の3年間を屋根裏部屋で過ごしたキャリーは、身体的な発達が他の子よりも不十分であることから、学校のクラスメートから陰湿なイジメにあっていた。そのうえ、祖母オリヴィアから浴びせられた「呪われた罪深い子供」「お前たちは生まれるべきではなかった」という言葉の数々も脳裏から離れない。兄や姉の前では明るく振る舞って見せるキャリーだったが、しかしその陰では自分の存在に意義や価値を見出せず、地獄のような苦しみを味わっていたのだ。

その頃、期待に胸を膨らませてニューヨークへやって来たキャシー。ところが、信頼していたジュリアンは、独善的で支配欲が強くて嫉妬深いモラハラ男で、キャリーは日常的に精神的・肉体的なDVに苦しめられる。そんなある時、学校を逃げ出したキャリーがニューヨークを訪れ、キャシーとジュリアンのアパートで同居することになるのだが、まだ高校生のキャリーをジュリアンが誘惑しようとする。車の中で激しい口論となるキャシーとジュリアン。その結果、交通事故に巻き込まれてジュリアンが死亡してしまう。それから1年後、ジュリアンとの息子ジョリーを出産したキャシーは、シングルマザーとして子育てしながらバレエ教室を経営していた。クリスはサラと正式に婚約。そんな折、高校を卒業したキャリーは、教会で知り合った若い牧師アレックスから求婚される。

果たして、結婚して家庭を持って幸せになる資格が自分にはあるのだろうか?思い悩むキャリーだったが、しかし姉キャシーに励まされてプロポーズを受ける。そこで脳裏に浮かぶのは懐かしい母の姿だった。実の子供たちを毒殺しようとした鬼のような母だが、しかし当時まだ幼かったキャリーは、そんな母を憎もうにも憎み切れなかったのだ。結婚式はお母さんにも来てもらいたい。そう考えたキャリーは母コリーンのもとを訪れ、結婚式の招待状を手渡そうとするが、そんな彼女をコリーンは「あなた誰?私に子供なんていないわよ」と冷たく言い放って追い返す。ショックを受けたキャリーは、その翌朝遺体で発見される。絶望のあまり自殺を選んだのだ。事の次第を悟ったキャシーは激しい怒りに燃える。全ての不幸の元凶となった祖母オリヴィアと母コリーンに、私たちと同じ痛みや苦しみを味わせてやる!そう決意した彼女は、綿密に練った大胆な復讐計画を実行に移すのだったが…?

これぞまさしく因果応報の物語。前作では伝統的な家父長制の根強い上流社会にあって、長年に渡って虐げられてきたがゆえに怪物化してしまった母親たち、その歪んだ愛と憎しみの標的となってしまった子供たちの悲劇を描いたわけだが、今回はその子供たちが負の連鎖を断ち切るために反撃ののろしを上げ、おのずと母親たちが己の犯した罪の報いを受けることとなる。過去を忘れて新たな人生をスタートしたいと思っても、過去に決着を付けなければ前へ進むことが出来ない。母親や祖母から植え付けられた罪の意識や自己肯定感の低さ。それゆえ、キャシーはモラハラ気質のDV男ジュリアンの術中にまんまと陥り、クリスは優柔不断な態度で恩師とその愛娘を傷つけ、キャリーは自分の存在そのものを呪って死を選んでしまう。毒親に育てられた人間の痛みや苦しみを丹念に描き込みつつ、怒涛のクライマックスへ向けて徐々に盛り上げていくストーリーは悪くない。復讐のカタルシスとは程遠い後味の苦さも個人的に好みだ。

監督は前作のデボラ・チョウからバトンタッチし、インディペンデント・スピリット・アウォードの候補になったクリスティナ・リッチ主演の『Dead Girl』('06)や、ケイト・ベッキンセール主演の『リーガル・マインド~裏切りの法廷~』('13)などで高く評価されたカレン・モンクリーフが手掛けている。テレビ映画ゆえの低予算は一目瞭然ではあるものの、しかし'70年代の雰囲気や空気感はちゃんと出ていると思うし、端正でクラシカルな演出にもアメリカン・ゴシック的な味わいがある。登場人物たちの愛憎と情念を表現するために必要不可欠な濡れ場を、臆することなくしっかりと描いている点も評価できるだろう。

母親コリーン役のヘザー・グレアム、祖母オリヴィア役のエレン・バースティン、コリーンの再婚相手バート役のディラン・ブルースは前作に引き続いての再登板だが、今回はいずれも出番が限られている。一方、実質的な主人公であるキャシーとクリス、キャリーの3人は、前作から10年が経過しているということもあってキャストを刷新。中でも、物語の柱となるキャシーの精神的な成長を力強く演じたローズ・マクアイヴァーのリアルな存在感が光る。彼女はこの翌年に人気ドラマ『iゾンビ』('15~'19)の主演に抜擢され、現在もホラーコメディ『Ghost』('21~・日本未放送)の主演を務めるなど、主にテレビ界で活躍する人気スターとなった。Netflixのクリスマス定番映画『クリスマス・プリンス』シリーズ('17~)のヒロイン、アンバー役でもお馴染みだろう。また、マシュー・ボーン版『白鳥の湖』で来日経験もあるバレエダンサー、ウィル・ケンプがイケメンDV男ジュリアンを演じているのも要注目である。

評価(5点満点):★★★☆☆
参考DVD情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.78:1)/音声:5.1ch Dolby Digital Surround/言語:英語/字幕:英語/地域コード:1/時間:88分/発売元:Lionsgate/A&E Television Networks
特典:なし
by nakachan1045
| 2023-02-05 19:43
| 映画
|
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