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なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画&音楽レビュー日記
by なかざわひでゆき
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「シェイマス」 Shamus (1973)

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監督:バズ・キューリック
製作:ロバート・M・ウェイトマン
脚本:バリー・ベッカーマン
撮影:ヴィクター・J・ケンパー
音楽:ジェリー・ゴールドスミス
出演:バート・レイノルズ
   ダイアン・キャノン
   ロン・ウェイアンド
   ジョー・サントス
   ジョン・ライアン
   ジョルジオ・トッツィ
   ラリー・ブロック
   ビーソン・キャロル
   ケヴィン・コンウェイ
   ケイ・フライ
   ジョン・グローヴァー
   アレックス・ウィルソン
アメリカ映画/98分/カラー作品




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デビュー11年目にして『脱出』('72)で念願の大ブレイクを果たし、雑誌「コスモポリタン」のヘアヌード写真でセンセーションを巻き起こしたバート・レイノルズが、その勢いに乗って主演を果たしたハードボイルド風アクション・コメディである。さながら、コミカルな味付けを施した'70年代版『三つ数えろ』('46)のごとし。設定やプロットは数多のハードボイルド小説からの寄せ集めという印象だし、テレビがメインだったバズ・キューリック監督の演出も少々軽すぎるように感じるが、それだけに頭を空っぽにして楽しめる気軽なアクション・エンターテインメントに仕上がっている。
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舞台はニューヨークのブルックリン。主人公はチンピラ上がりの私立探偵シェイマス・マッコイ(バート・レイノルズ)だ。大の女好きで相手にも困らないプレイボーイだが、残念ながら仕事の依頼はさっぱり来ないという二流探偵。それでも、幼馴染みのプロムート警部(ジョー・サントス)や情報屋スプリンギー(ラリー・ブロック)など、地元出身の仲間たちからは愛されている存在だ。そんなある日、シェイマスは幾つもの会社を手広く経営する大富豪ヒューム(ロン・ウェイアンド)に呼び出される。最近、彼の会社から数百万ドル相当のダイヤモンドが盗まれ、警察は名うての泥棒ヴィクター・パパスを犯人と睨んでいたのだが、そのパパスと共犯の恋人が何者かによって焼き殺されてしまった。誰がなぜパパスを殺したのか?ヒュームはそれを調べて欲しいという。俺みたいなチンケな私立探偵になぜ頼むのか。大富豪に相応しい一流の探偵なら他に沢山いるだろうに。訝しがるシェイマスではあったが、しかし手付金1万ドルに成功報酬5万ドルという、彼にとっては大金のギャラに惹かれて引き受けることにする。
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早速、仲間のスプリンギーに情報収集を依頼し、自らも調査のため駆け回るシェイマス。麻薬密売人ジョニー(ジョン・グローヴァー)から、パパスと恋人がリバレッジ輸出という貿易会社に勤務していたこと、ブルックリンにあるヘルス・クラブというレストラン・バーに入り浸っていたことを聞き出す。スプリンギーの情報によると、リバレッジ輸出の社長は有名な元フットボール選手のフェリックス・モンテイン(アレックス・ウィルソン)。現役引退後にリバレッジ輸出の幹部として雇われたが、いずこからか多額の資金を調達したらしく、その1年後に会社を買収して社長の座に収まったという。どうも胡散臭い。一方、パパスはヘルス・クラブの用心棒ボルトン(ビーソン・キャロル)と繋がりがあった。どうやらボルトンは裏社会の人間らしい。閉店を見計らって待ち伏せしたシェイマスは、ボルトンをボコボコにしたうえで情報を聞き出そうとする。彼曰く、パパスを殺したのはフェリックスだという。こうなったら本人に直接問いただすしかない。そう考えたシェイマスはフェリックスの住む高級アパートへ向かう。
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パパスの部屋から出てきた女性をひと目見て驚くシェイマス。ヘルス・クラブでナンパしようとした美女だったからだ。彼女はトップモデルのアレクシス(ダイアン・キャノン)。奇遇にもフェリックスの姉だった。パパスとその恋人が自社で働いていたことは認めたものの、彼らの犯罪行為については知らぬ存ぜぬを通すフェリックス。会社の買収資金の出所を訊ねると、共同経営者の存在をほのめかすが、しかしそれが誰なのかは明かさなかった。その晩、シェイマスは自宅で待ち伏せしていた3人組に暴行を受け、「パパスの件から手を引け」と警告される。警察も捜査に行き詰まっていた。そこでシェイマスとプロムート警部は、ブルックリン界隈を仕切るマフィアの大物ボス、ドットーレ(ジョルジオ・トッツィ)に助言を求める。すると、昨晩の3人組がフェリックスの手下であることが判明。さらに、何事にも裏があるとして警戒するようアドバイスを受ける。
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アパートへ帰宅したシェイマスをアレクシスが待っていた。弟フェリックスの身辺調査を依頼したいという。このところ急に弟の態度がおかしくなったと語るアレクシスは、どうやらフェリックスの仕事については全く知らないようだ。アレクシスに惹かれていたシェイマスは依頼を引き受け、やがて男女の関係となっていく。ともかく、事件の関係者を繋ぐ唯一の接点はリバレッジ輸出である。そこでシェイマスは「会社が何を輸出しているのか」を調べるべく、リバレッジ輸出の倉庫へ忍び込んだところ、そこで大量の機関銃を発見する。同梱されたいインボイスには、ハードコア陸軍中佐(ジョン・ライアン)の承認印まで押されていた。フェリックスは陸軍から横流しされた武器を国外へ密輸していたのである。こりゃ俺の手に負える案件じゃない。シェイマスは調査から手を引くことを依頼人ヒュームに伝える。ところが、その直後にスプリンギーが殺されてしまった。激しい怒りと共に復讐を誓うシェイマス。やがて、一連の事件の意外な真相が明らかとなり、裏で糸を引いていた黒幕の存在が暴かれることとなる…。
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ということで、全米の女性を虜にした'70年代最高のセックスシンボル、バート・レイノルズが、胸毛ボーボーのマッチョボディをそこかしこで披露しつつ、思いがけず巨大な陰謀に巻き込まれてしまった場末の二流探偵シェイマス・マッコイを体当たりで演じる。プロットそのものはまさしくレイモンド・チャンドラーの世界だが、明朗快活なユーモアとノリの良さはバート・レイノルズ映画ならではですな。なので、本来ならローレン・バコール的なファム・ファタールとなるはずのダイアン・キャノンも、ここでは天真爛漫な気のいいお姐ちゃん。えっ?よくよく考えると都合の良すぎる筋運びだって?いやいや、よくよく考えずとも最初からいろいろと都合が良すぎるのですよ(笑)。でも、そんなB級っぽさもまた本作の醍醐味と言えば醍醐味。予定調和の何が悪い!ってなもんだ。
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むしろ本作は、ありきたりなプロットの隅々に配置された、わけありなクセモノたちを楽しむべき作品であろう。ビリヤード台をベッド代わりに夜ごと女を部屋へ連れ込み、天井から籠に入れて吊るした電話の受話器を取って面倒くさそうに仕事の依頼を受ける、まるでやる気のないグウタラな私立探偵シェイマス。天才的な記憶力の持ち主で、膨大な量の情報を頭の中に蓄積しているくせに、なぜか役に立たないスポーツ選手の成績記録ばかり覚えている情報屋スプリンギー。自らキッチンに立って自慢の腕を振るう料理好きの美食家で、地域住民の面倒をよく見る物腰の柔らかい温厚な紳士だが、実際は地元の裏社会を取り仕切っているマフィアの親分ドットーレ。そのほかにも、一癖も二癖もある胡散臭いけど魅力的なキャラクターが次々と登場する。悪人たちもどこか間抜けで憎めない。このゆるーい感じがたまりませんな。
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ゆるいといえばアクションも同様。いや、この場合は粗雑とか乱暴とか呼ぶべきか(笑)。細部まで緻密に計算された難易度の高い昨今のアクションと違って、半ば行き当たりばったりのようなアクションは極めて原始的だが、しかしこの粗削りなスタントこそが、映画の荒々しい暴力に作り物ではない真実味を持たせている。実際、劇中では役者たちが疾走中に転んだりぶつかったりしているが、どれもどう見たってマジなアクシデントですからね。恐らく、リテイクなしのぶっつけ本番で撮っている。その不完全さがむしろリアルなのだ。
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そう考えると、バート・レイノルズとのベッドシーンくらいしか見せ場のないダイアン・キャノンは少々気の毒。完全に添え物扱いだ。そういえば彼女、この当時は超引っ張りだこの売れっ子女優だったが、あまり人気は長続きしませんでしたな。その後、テレビ『アリー my Love』('97~'02)でプチ再ブレイクすることになるわけだが、その頃には彼女が人気映画スターだったことなど誰も覚えていなかった。当時すでにライターだった筆者は寂しく感じましたよ。ホント、チャンネル担当者も編集担当者も、さらには同業ライターですら「はっ?有名なんですか?このオバサンが?」みたいな反応でしたもん。
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シェイマスの幼馴染であるプロムート刑事役のジョー・サントスも懐かしい顔。テレビ『ロックフォードの事件メモ』('74~'80)のベッカー刑事ですな。ハードコアなる珍妙な名前の陸軍中佐には、'80年代B級アクションに欠かせない悪役俳優ジョン・ライアン。そうそう、『グレムリン2』('90)とか『ロボコップ2』('90)とか『バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲』('97)とか、シリーズ物の小悪党役でお馴染みのジョン・グローヴァーも顔を出している。これが映画デビューだったらしい。当たり前だが若い(笑)!なお、マフィアの親分ドットーレ役のジョルジオ・トッツィは、メトロポリタン・オペラの有名なテノール歌手だったそうだ。
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評価(5点満点):★★★☆☆

参考DVD情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.78:1)/音声:2.0ch Dolby Digital Mono/言語:英語/字幕:英語・フランス語・スペイン語/地域コード:1/時間:98分/発売元:Sony Pictures
特典:なし



by nakachan1045 | 2023-02-08 16:02 | 映画 | Comments(0)

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