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なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画&音楽レビュー日記
by なかざわひでゆき
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「2000人の狂人」 Two Thousand Maniacs (1964)

「2000人の狂人」 Two Thousand Maniacs (1964)_f0367483_02194589.jpg
監督:ハーシェル・ゴードン・ルイス
製作:デヴィッド・F・フリードマン
脚本:ハーシェル・ゴードン・ルイス
撮影:ハーシェル・ゴードン・ルイス
音楽:ハーシェル・ゴードン・ルイス
主題歌:チャック・スコット&ザ・プレザント・ヴァレー・ボーイズ
出演:コニー・メイソン
   トーマス・ウッド(ウィリアム・カーウィン)
   シェルビー・リヴィングストン
   ベン・ムーア
   ジェローム・イーデン
   ゲイリー・ベイクマン
   マーク・ダグラス(スタンリー・ダイレクター)
   リンダ・コクラン
   イヴォンヌ・ギルバート
   マイケル・コーブ
   ヴィンセント・サント
特別出演:ジェフリー・アレン
アメリカ映画/87分/カラー作品




「2000人の狂人」 Two Thousand Maniacs (1964)_f0367483_23444248.jpg
スプラッター映画の父ハーシェル・ゴードン・ルイス監督の代表作であり、生前の本人も「自分の作った全ての作品の中で最も好き」と語っていた映画である。映画史上初のスプラッター映画と呼ばれる『血の祝祭日』('63)をたったの2万4500ドルで製作し、自主製作のインディーズ映画でありながら興行収入400万ドルを稼ぎ出したゴードン・ルイス監督と製作者デヴィッド・F・フリードマンの名コンビ。ただし、監督としては大きな心残りがあったという。こんなに大当たりするのだったら、もうちょっとマシな映画を作っておけばよかったと(笑)。
「2000人の狂人」 Two Thousand Maniacs (1964)_f0367483_23465666.jpg
もともと、場末の映画館などでひっそり上映される成人向けのヌード映画を撮っていたゴードン・ルイス監督。『血の祝祭日』も基本的には同じようなノリで、大して手間も暇もかけず安上がりに作ったところ、それこそ寝耳に水の大ヒットを記録してしまった。見たこともないような大金を手に出来たのは嬉しいし、おかげで全米各地の映画館や配給会社から声がかかるようになったが、しかしこんな素人紛いの稚拙な映画で自分の名前が広く知られてしまうのは恥ずかしい。今度はちゃんとした商業用映画らしい作品を撮ろう。そう考えたゴードン・ルイス監督とフリードマンが、6万2000ドルという彼らにとっては破格(?)の予算を投入し、『血の祝祭日』の4日間に対して2週間の撮影スケジュールを組んで挑んだ野心作が、結果的にゴードン・ルイス監督の名声を決定づけた『2000人の狂人』('64)だったのである。
「2000人の狂人」 Two Thousand Maniacs (1964)_f0367483_23451870.jpg
舞台はアメリカ南部のジョージア州。人里離れた寂しげな田舎道で2人の怪しい男たちが、偽の立て看板を使って通りすがりの車を脇道へ誘導している。見張り役のルーファス(ゲイリー・ベイクマン)が近づいてくる車を確認し、ナンバープレートが北部州のものであればオーケーサインを送って、道路脇に待機するレスター(ベン・ムーア)が迂回の誘導看板を設置して草むらに隠れる。こうして、2台の車に乗った合計6名の男女が、何も知らず脇道へと入っていった。彼らが辿り着いたのは、古き良き時代の風情を残す田舎町プレザント・ヴァレー。どうやら町では大々的な祝賀行事が行われているらしく、2000人の住民たちが総出になって6名の旅人を大歓迎する。
「2000人の狂人」 Two Thousand Maniacs (1964)_f0367483_23453437.jpg
「いったいこれは…?」と予想外の展開で戸惑う男女に、「ようこそプレザント・ヴァレーへ!今日と明日は100年に1度の大切なお祭りです!あなた方を来賓としてお迎えします!もちろん、宿泊費も食費も全て無料!どうぞお楽しみください!」と出迎えるバックマン町長(ジェフリー・アレン)。いやいや、自分たちにも予定があるので…と断ろうとする旅人たちだったが、しかし半ば強引に車から引きずり出され、祝賀行事の来賓として町の人々から歓待を受けることとなる。それにしても、100年に1度の祭りって何だろう?そもそも、なぜ縁もゆかりもない自分たちを来賓扱いするのだろうか?狐につままれたような表情でホテルへ案内される6名の男女。そんな彼らを眺めながら、バックマン町長と住民たちは不気味にほくそ笑む。
「2000人の狂人」 Two Thousand Maniacs (1964)_f0367483_23462792.jpg
実はこのプレザント・ヴァレー、かつて南北戦争の末期に北軍の襲撃を受け、住民2000人が皆殺しにされたうえで焼き払われた町だった。それからちょうど100年が経った今、虐殺された住民たちが怨霊となって現世に復活し、憎っくき北軍の子孫たちへの復讐を企てていたのである。お楽しみのバーベキュー・パーティだって、もちろん食材は旅人の男女の人肉!彼らを八つ裂きにするための、バラエティ豊かな殺人アトラクションも準備されていた。陽気な町の人々に連れ出され、次々と血祭りにあげられていく犠牲者たち。いち早く身の危険を察知したトム(ウィリアム・カーウィン)とテリー(コニー・メイソン)は、監視の目をくぐり抜けて町からの脱出を試みるのだが…?
「2000人の狂人」 Two Thousand Maniacs (1964)_f0367483_23464161.jpg
ということで、南北戦争で滅ぼされて地図から消えた田舎町が100年後に甦り、復讐のために行きずりの旅人を誘い込んで皆殺しにする…というプロット自体がそもそも秀逸!陽気なカントリー・ミュージックに乗せたコミカルな演出と、凄惨で血生臭いスプラッター描写のアンバランスな組み合わせも、なんとも言えない薄気味悪さや居心地の悪さを醸し出して絶妙である。不自然なくらい明るくてノリの良い2000人の住民も狂気じみているし、そんな彼らが最初の殺人(正確には2人め)で「なんてことしてしまったんだ…」と我に返って立ちすくむ瞬間がまたリアル!積年の恨みに燃えていた怨霊たちも、いざとなると罪の意識を覚えてしまうわけですな。まあ、すぐに気を取り直して凶行を続けることになるのだが、こういう細やかな描写まで神経の行き届いているところは、あまりにも大味だった『血の祝祭日』との決定的な違いであろう。
「2000人の狂人」 Two Thousand Maniacs (1964)_f0367483_23460251.jpg
もちろん、ツッコミどころもないわけではない。100年ぶりに復活した町なのに、なぜか住民の服装や髪型は'60年代の現代風だし、ホテルの部屋には当時まだ存在しなかったはずの電話が備わっているし、街の中にも電話ボックスや自動車ガレージが存在する。現代人を騙すためのアップデートと解釈することも可能だが、恐らく最大の理由は100年前の田舎町をセットで再現するに十分な予算がなかったためだ。そのほか低予算ゆえの粗は、撮影技術や録音技術にも見受けられる。夜間シーンの一部はスポット照明の数が足りなくて見えずらいし、何らかの理由でセリフを吹き替えたシーンはまるで自宅録音でもしたような仕上がりだ。安かろう悪かろうの『血の祝祭日』よりだいぶマシとはいっても、そこはやはり自主製作のインディーズ映画。チープであることには変わりない。
「2000人の狂人」 Two Thousand Maniacs (1964)_f0367483_23470459.jpg
最大の見どころは趣向を凝らした殺害シーンの数々。全体的に『血の祝祭日』と比べるとゴア描写は控えめであるものの、両手足をそれぞれ縄で縛って四方向へ馬に引っ張らせてバラバラにしたり、無数の釘を打ち付けた樽の中に押し込んだうえで転がして全身メッタ刺しにしたり、野球ボールを的に命中させることで巨大な岩を落として圧死させたりと、カーニバルのアトラクション気分なノリノリの殺害方法はいずれも惨たらしい。大人から子供まで、目をらんらんと輝かせながら見守る住民たちの熱狂ぶりにもゾッとする。ちなみに、ロケ地はフロリダ州のセント・クラウドという小さな町で、現地の住民がエキストラで参加したという。撮影に使われたホテルや町庁舎は今もそのまま残っているそうだ。
「2000人の狂人」 Two Thousand Maniacs (1964)_f0367483_23472855.jpg
主演は『血の祝祭日』と同じくコニー・メイソンとウィリアム・カーウィンの2人。ゴードン・ルイス監督とメイソンはソリが合わなかったらしく、演技が下手なくせに女王様然として振る舞うメイソンに監督は腹を立てていたそうだが、しかし『血の祝祭日』の撮影終了後にメイソンが「プレイボーイ」誌のプレイメイトとして注目されたため、プロモーション用の客寄せとして再び起用することになったようだ。なお、本作の撮影終了後にメイソンとカーウィンは結婚している。また、バックマン町長役のジェフリー・アレンはイリノイ州で見つけたアマチュア舞台俳優で、映画デビューだった本作に続いてゴードン・ルイス監督の『Moonshine Mountain』('64)と『サムシング・ウィアード』('67)にも出演。レスター役のベン・ムーアとテーマ曲を歌うチャック・スコットも『Moonshine Mountain』に出ている。
「2000人の狂人」 Two Thousand Maniacs (1964)_f0367483_23461469.jpg
ゴードン・ルイス監督の代表作だけあって、これまでにアメリカでも日本でも幾度となくソフト化されている本作。筆者はArrow Filmsから'16年に英米で発売された17枚組ブルーレイ&DVDボックス「Herschell Gordon Lewis: Feast」を入手したのだが、本作は'11年に米Something Weird社からリリースされたブルーレイと同一の本編マスターを使用している。なので日本盤ブルーレイとも画質・音質は全く同じだ。最大の違いは新たに撮り下ろしされた特典映像と、旧DVDから移植された音声解説およびアウトテイク集。リメイク版『2001人の狂宴』('05)のティム・サリヴァン監督による、ゴードン・ルイス監督への愛情あふれるインタビューも非常に面白い。
「2000人の狂人」 Two Thousand Maniacs (1964)_f0367483_23454516.jpg
評価(5点満点):★★★★☆

参考ブルーレイ&DVD情報(アメリカ盤)※ボックスセット「Herschell Gordon Lewis: Feast」収録
ブルーレイ
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/1080p/音声:1.0ch リニアPCM/言語:英語/字幕:英語/地域コード:ALL/時間:87分
DVD
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/音声:1.0ch Dolby Digital/言語:英語/字幕:英語/地域コード:ALL/時間:87分
発売元:Arrow Films
特典:ハーシェル・ゴードン・ルイス監督、製作者デヴィッド・F・フリードマンらによる音声解説/ティム・サリヴァン監督のインタビュー('16年制作・約10分)/ドキュメンタリー「Hicksploitation: Confidential」('16年制作・約7分)/ハーシェル・ゴードン・ルイス監督によるイントロダクション('16年制作・約2分)/ハーシェル・ゴードン・ルイス監督のインタビュー('16年制作・約3分)/ドキュメンタリー「David Friedman: The Gentleman's Suit Peddler」('16年制作・約9分)/アウトテイク集(約16分)/オリジナル予告編集



by nakachan1045 | 2023-02-26 00:06 | 映画 | Comments(0)

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