なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧
「ヒューマノイド/宇宙帝国の陰謀」 L'umanoide (1979)

製作:ジョルジオ・ヴェンチュリーニ
原案:アドリアーノ・ボルゾーニ
脚本:アドリアーノ・ボルゾーニ
アルド・ラドー
撮影:シルヴァーノ・イポリッティ
第二班監督:エンツォ・G・カステラーリ
特撮監修:アントニー・M・ドーソン(アントニオ・マルゲリティ)
特殊視覚効果:アルマンド・ヴァルカウダ
音楽:エンニオ・モリコーネ
出演:リチャード・キール
バーバラ・バック
コリンヌ・クレリー
アーサー・ケネディ
レオナード・マン
イワン・ラシモフ
マッシモ・セラート
マルコ・イェ
ヴェナンティノ・ヴェナンティーニ
ヴィト・フォルナーリ
イタリア映画/100分/カラー作品


なので、実のところ『スター・ウォーズ』のパクリというよりはレイ・ハリーハウゼンへのオマージュだった『スタークラッシュ』は、特撮ジャンルに対するコッツィの溢れんばかりの愛情が感じられて好印象だったが、とはいえビジュアル的にはテレビの子供向け特撮ヒーロー番組と大して変わらないレベルだったし、さらに言えばブレスチアがアル・ブラッドリー名義で撮った一連のSF映画は、あまりにもチープかつ稚拙な出来栄えゆえ正視に耐えない代物だった。そんな中にあって、恐らく最も見栄えの良かったイタリア産SF映画が本作『ヒューマノイド/宇宙帝国の陰謀』('79)である。

舞台は遥か遠い未来。かつて地球と呼ばれた惑星メトロポリスは、平和を愛する指導者「偉大なる兄弟」(マッシモ・セラート)が統治するユートピアだ。しかし、その「偉大なる兄弟」にはグラール(イワン・ラシモフ)という邪悪な弟がいた。権力欲が強くて好戦的なグラールを危険視した「偉大なる兄弟」は、彼を遠く離れた宇宙刑務所へ追放。ところが、その4年後にグラールは宇宙刑務所を脱走して軍隊を編成し、強奪した大型宇宙戦艦で惑星メトロポリスを目指す。当面の目的は兄への復讐だが、しかしそればかりが理由ではない。彼にはもっと壮大な夢と野望があった。それは銀河系を征服して支配者となること。そのためにはカピトロンという物質が必要だった。

人間を超人的なヒューマノイドに変えてしまう物質カピトロン。グラールはそれを配下の兵士たちに使用し、無敵のスーパー・ソルジャー軍団を作り上げようと考えていたのだ。そのカピトロンを開発した狂気の科学者クラスピン博士(アーサー・ケネディ)と、クラスピン博士の特効薬で永遠の若さと美貌を手に入れた邪悪な女王レディ・アガサ(バーバラ・バック)を味方につけたグラールは、カピトロンを奪うべくメトロポリスのグローヴァン研究所へ軍隊を送り込む。その際に、彼はクラスピン博士の強い要望で女性研究員バーバラ・ギブソン(コリンヌ・クレリー)を殺すよう指示する。かつてグローヴァン研究所でカピトロンを開発していたクラスピン博士。その危険性にいち早く気づいたバーバラは、狂気に取りつかれたクラスピン博士を精神病院送りにし、カピトロンが悪人の手に渡らぬよう研究所内に隠してしまった。クラスピン博士にとっては天敵だったのだ。

その頃、いつも通りにグローヴァン研究所で働いていたバーバラは、自宅で預かっている教え子の少年トムトム(マルコ・イェ)から、今すぐ帰宅するよう連絡を受ける。まだ仕事中だからと取り合わなかったバーバラ。すると、不思議な力を持つトムトムはバーバラにテレパシーで催眠術をかけ、その場で研究所を立ち去るように仕向けるのだった。その直後、グラールの軍隊がグローヴァン研究所を襲撃。従業員は皆殺しにされカピトロンも奪われてしまったが、しかしトムトムのおかげでバーバラは命拾いをする。この緊急事態を知った「偉大なる兄弟」は、襲撃事件の背後に弟グラールやクラスピン博士の存在があると察知。忠実な部下であるニック(レオナード・マン)にバーバラを警護するよう指示する。

一方、バーバラの暗殺には失敗したものの、念願のカピトロンを手に入れてご満悦のグラール一味。早速、実験台となる人間を探していたクラスピン博士は、ロボット犬キップと一緒に小型船で宇宙を旅する心優しき大男ゴロブ(リチャード・キール)に目を付け、罠を仕掛けてカピトロンを浴びせる。たちまち、獣のように凶暴なヒューマノイドと化したゴロブ。その頭部にマインドコントロール用チップを埋め込んだクラスピン博士は、グラールの命令で「偉大なる兄弟」を暗殺するためにゴロブをメトロポリスへ送り込む。凄まじい怪力で警備兵たちをなぎ倒し、「偉大なる兄弟」を殺さんとするゴロブ。ところが、バーバラ暗殺の失敗がどうしても心残りだったクラスピン博士は、土壇場でターゲットを「偉大なる兄弟」からバーバラへ変更するようゴロブに指示。すぐさまゴロブはバーバラの自宅を襲撃するものの、しかしトムトムの超能力パワーに暗殺を阻止される。

まるで猛獣使いのようにゴロブを落ち着かせ、彼の頭部からマインドコントロール用チップを除去するトムトム。すっかりバーバラやトムトムと仲良くなったゴロブは、グラール一味が惑星ノクソンの秘密基地に隠れていることを伝える。すぐにでも「偉大なる兄弟」に伝えなくてはいけない。そう考えたバーバラは首都へ向かったところ、その途中でグラールの差し向けた軍隊に捕らえられ、惑星ノクソンへ連れ去られてしまう。バーバラを救うために追いかけるニックとゴロブ。気が付くと、宇宙船にはトムトムとロボット犬キップも乗り込んでいた。グラールの秘密基地へ忍び込んだニックたち。果たして、彼らはバーバラを救い出して宿敵グラールの野望を打ち砕くことが出来るのか…?

ということで、キャスト&スタッフのクレジットとバックストーリーの解説文が、スクリーンの手前から奥へとスクロールしていくオープニングからして『スター・ウォーズ』のパクり。まあ、これはお約束中のお約束ですな。『スター・ウォーズ』に影響を受けた映画はみ~んな、これをやりたがりますから(笑)。そればかりか、宇宙船や衣装のデザインから砂漠に覆われた惑星の景色まで、どこまでも忠実に『スター・ウォーズ』の世界をコピーしている。しかも、これがなかなか巧い。当時、雨後の筍のごとく世界中で作られたパクリ映画たちの中でも、少なくともビジュアルに関しては本作が最もハイレベルではないかと思う。悪の権化グラールがダースベイダーにソックリなのも、ヒロインのバーバラの髪型や衣装がなんとなくレイア姫風なのもご愛敬。犬の特徴を良く捉えたロボット犬キップの動作も細部まで念が入っている。

特撮シーンのスーパーバイザーを担当したのはアンソニー・M・ドーソンことアントニオ・マルゲリティ。ご存知の通り、'60年代に『惑星からの侵略』('65)や『惑星大戦争』('66)などをヒットさせ、イタリア産SF映画のパイオニアとして活躍した映画監督マルゲリティだが、実は特撮マンとしても自身のSFX工房を持っており、彼の映画に出てくる特撮シーンは全て本人が担当していた。そんな彼にとって、本作は他人の映画で特撮を手掛けた数少ないケースのひとつである。そのマルゲリティのもとで宇宙シーンのオプチカル効果を担当したのが、『スタークラッシュ』で特撮監督を務めたアルマンド・ヴァルカウダ。さらに、イタリアン・アクションの帝王エンツォ・G・カステラーリ監督が、第二班監督としてアクション・シーンの演出に当たっている。なんとも豪華で充実したスタッフの顔ぶれ!なるほど、仕上がりのクオリティも高いわけである。

監督は筆者も大好きなジャッロ映画の隠れた傑作『死んでいるのは誰?』('72)や、イタリア版『鮮血の美学』としてカルト的な人気を誇るバイオレンス映画『暴行列車』('75)で知られる名匠アルド・ラド。徹底してスタイリッシュな絵作りやカメラワークにこだわり、低予算ゆえの安っぽさを最大限に排除した演出は、ある意味でB級プログラムピクチャーのお手本である。惜しむらくは、脚本が壊滅的に退屈で面白味に欠けていることであろう。そもそもお話のスケールが小さい。なにしろ、突き詰めればただの兄弟喧嘩である(^^;。加えて、恐らく低予算の粗を隠すことを考えてのことだろうが、『スター・ウォーズ』の売りでもあった宇宙空間での戦闘機バトルなどの、大掛かりで派手な特撮シーンを避けたことも、退屈なストーリーになってしまった要因のひとつと言えよう。その点、結果としては安っぽい見た目になってしまったが、自分の見たい特撮シーンをこれでもかと盛り込んだルイジ・コッツィの『スタークラッシュ』は、とりあえず脚本だけはサービス精神旺盛で楽しかった。いやはや、まさに痛し痒しといったとこですな。ちなみに、ジョージ・B・ルイスというアルド・ラドの偽名は、ジョージ・ルーカスを意識したのだそうだ。なんと、そこまでパクりますか(笑)。

そういう意味でちょっと意外だったのは、巨匠エンニオ・モリコーネが手掛けた音楽スコア。こちらは『スター・ウォーズ』のジョン・ウィリアムズを全く意識しておらず、むしろだいぶかけ離れた印象の音楽スコアを提供している。シンセサイザーを駆使したシンフォニックなエレクトロ・サウンドは、さながらヴァンゲリスの如し。随所にサウンド・エフェクトをブレンドした、かなり自由で実験的な音作りもエクスペリメンタル・ジャズに精通したモリコーネらしいセンスだと言えよう。

主演スターとしてクレジットされているのは、当時『007』シリーズの悪役ジョーズとして人気を博していた怪優リチャード・キール。ヒロインのバーバラ役に『007/ムーンレイカー』('79)のコリンヌ・クレリー、悪女レディ・アガサ役に『007/私を愛したスパイ』('77)のバーバラ・バックと、明らかにジェームズ・ボンド映画を意識したキャスティングも興味深いところ。ただし、『スター・ウォーズ』のハン・ソロとチューバッカを足して割ったような怪力男ゴロブは実のところ脇役に過ぎず、いわば旬の俳優であるリチャード・キールの話題性に頼ったキャスト・クレジットであることが透けて見える。また、殺した若い女性の生血から作られた特効薬で永遠の若さと美貌を保つという、まるでバートリ・エリジェベトのごときレディ・アガサの女吸血鬼的キャラは面白いが、しかしストーリーの上では大して重要な役割を果たすでもなく、結果として単なる色添えに終始してしまったことは惜しまれる。

実質的な主人公に当たる若き英雄ニック役には、マカロニ・ウエスタンのヒーローとして活躍したアメリカ人俳優レオナード・マン。ダースベイダー風のヘルメットに隠れて顔が見えづらいものの、ジャッロ映画や犯罪アクション映画のサイコパス役として活躍したイワン・ラシモフが宿敵グラールを演じている。その兄である平和的な指導者「偉大なる兄弟」には、ファシスト時代を代表する二枚目俳優のひとりだったイタリア映画界の重鎮マッシモ・セラート。『エル・シド』('61)や『北京の55日』('63)など、チネチッタで撮影されたハリウッドの歴史大作映画でも欠かせない顔だった。そんな中で強烈な印象を残すのが、『必死の逃亡者』('55)や『アラビアのロレンス』('62)などでもお馴染みのハリウッドの名優アーサー・ケネディ。当時はイタリアへの出稼ぎ仕事が多く、犯罪アクション映画の上司役や悪役などで引っ張りだこだったケネディだが、本作では誇大妄想狂のごときマッド・サイエンティスト、クラスピン博士を嬉々として演じている。

なお、劇場公開時の上映スペックは標準的なビスタサイズだったはずだが、しかしアメリカで発売されているDVDは「4:3」のスタンダードサイズ。テレビ放送用に画面の左右をカットしたトリミング版かと思ったが、しかし実際に映像を見てみると左右をカットした際に生じる不自然さは殆んど見られない。画質もテレビマスターにしては極めて良好だ。恐らく、スタンダードサイズで撮影して上下をマスキングする「疑似ワイドスクリーン」方式で作られたのかもしれない。その方がビスタサイズ用のフィルムを使うよりもコストを抑えられるため、当時の低予算映画ではしばしば「疑似ワイドスクリーン」方式が採用されていた。本作もそのひとつだったのだろう。
評価(5点満点):★★★☆☆
参考DVD情報(アメリカ盤)
カラー/スタンダードサイズ(1.33:1)/音声:2.0ch Dolby Digital/言語:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/時間:100分/発売元:Reel Vault
特典:なし
by nakachan1045
| 2024-03-06 03:30
| 映画
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