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なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画&音楽レビュー日記
by なかざわひでゆき
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「クイン・メリー/愛と悲しみの生涯」 Mary, Queen of Scots (1971)

「クイン・メリー/愛と悲しみの生涯」 Mary, Queen of Scots (1971)_f0367483_13165509.jpg
監督:チャールズ・ジャロット
製作:ハル・B・ウォリス
脚本:ジョン・ヘイル
撮影:クリストファー・チャリス
美術:テレンス・マーシュ
衣装:マーガレット・ファース
音楽:ジョン・バリー
出演:ヴァネッサ・レッドグレーヴ
   グレンダ・ジャクソン
   パトリック・マクグーハン
   ティモシー・ダルトン
   ナイジェル・ダヴェンポート
   トレヴァー・ハワード
   イアン・ホルム
   ダニエル・マッセイ
   アンドリュー・キアー
   トム・フレミング
   キャサリン・キャス
   ベス・ハリス
   フランシス・ホワイト
   ヴァーノン・ドブチェフ
アメリカ・イギリス合作/131分」/カラー作品




「クイン・メリー/愛と悲しみの生涯」 Mary, Queen of Scots (1971)_f0367483_16074426.jpg
ハリウッドの伝説的な大物プロデューサー、ハル・B・ウォリスが、オスカーを席巻した『ベケット』('64)と『1000日のアン』('69)に続いて世に送り出した英国王室ドラマ第3弾である。『ロビンフッドの冒険』('38)に『愛の勝利』('39)、『マルタの鷹』('41)に『カサブランカ』('41)などなど、黄金期のハリウッドを象徴するような名作の数々を手掛けたハル・B・ウォリス。もともと英国中世史に関心が高かったという彼は、カンタベリー大司教トマス・ベケットと英国王ヘンリー2世の友情と対立を描いた舞台劇「ベケット -神の名誉」を映画化。それがオスカー11部門にノミネート(うち脚色賞を受賞)された『ベケット』だった。
「クイン・メリー/愛と悲しみの生涯」 Mary, Queen of Scots (1971)_f0367483_16080246.jpg
さらに、英国王ヘンリー8世の妃にして反逆罪の濡れ衣で処刑された女性アン・ブーリンの悲劇を描いた『1000日のアン』を発表。こちらも同名舞台劇の映画化で、やはりアカデミー賞では10部門にノミネート(うち衣装デザイン賞を受賞)されている。その『1000日のアン』のチャールズ・ジャロット監督に脚本家のジョン・ヘイル、衣装デザインのマーガレット・ファースなどの主要スタッフを再招集し、ウォリスが三度挑んだ英国王室ドラマが本作だったというわけだ。
「クイン・メリー/愛と悲しみの生涯」 Mary, Queen of Scots (1971)_f0367483_16083892.jpg
物語の始まりは1560年。フランス国王フランソワ2世が若くして崩御し、スコットランド女王でもある王妃メアリー・ステュアート(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)は、子供がいないこともあって祖国へ帰されることとなる。しかし、イングランドと同様に宗教改革の進んだスコットランドでは、多くの貴族がプロテスタントに改宗しており、カトリック信者である女王の帰還を快く思わない勢力が少なくない。さらに、野心的な腹違いの兄ジェームズ(パトリック・マクグーハン)の存在も厄介だった。庶子ゆえに王位継承権こそないものの、しかし人一倍権力欲の強いジェームズは、メアリーを形式だけの女王にして自分が実権を握ろうと考えていたのである。とんでもありません!スコットランドの統治者はこの私ですよ!その繊細な美しさとは裏腹に誇り高くて気性の激しいメアリー女王は、兄の代わりに同じカトリックのイタリア貴族リッチオ(イアン・ホルム)を政治顧問として重用する。
「クイン・メリー/愛と悲しみの生涯」 Mary, Queen of Scots (1971)_f0367483_16134080.jpg
その頃、イングランドの女王エリザベス(グレンダ・ジャクソン)もまたメアリーのスコットランド帰還に気を揉んでいた。というのも、エリザベスの実母アン・ブーリンはヘンリー8世の王妃だったが、しかし濡れ衣とはいえ反逆罪で処刑された身。それゆえエリザベスは庶子として扱われてしまい、イングランド国内でも彼女の王位継承の正当性を疑問視し、正式にイングランドの王位継承権を持つ親戚のメアリー女王を担ぎ出そうという勢力が存在したからだ。いっそのことメアリーを亡き者にしてしまえば…と、狡猾な秘書長官ウィリアム・セシル(トレヴァー・ハワード)が進言するものの、しかしそんなことをすれば敵対勢力に謀反の口実を与えかねない。あくまでも、エリザベス女王の望みはメアリー女王がイングランドに対して影響力を及ぼさぬこと。別に殺すつもりなど毛頭ない。ただ、私の地位を脅かすことさえなければそれでいいと。
「クイン・メリー/愛と悲しみの生涯」 Mary, Queen of Scots (1971)_f0367483_16102344.jpg
そこでエリザベス女王は一計を案じる。若くして未亡人となったメアリー女王は、さぞかし男日照りで寂しかろう。恋愛にうつつでも抜かしていれば、政治的野心など忘れてしまうに違いない。そう考えたエリザベス女王は、自身の若い愛人であるロバート・ダドリー(ダニエル・マッセイ)を花婿候補としてスコットランドへ派遣する。といっても、自分のお下がりをメアリー女王が選ぶはずがないことなど承知済み。あくまでも、これは自身とダドリーのスキャンダルを鎮静化させるための工作であり、ダドリーの次に送り込んだダーンリー卿(ティモシー・ダルトン)こそが本命だった。というのも、その美しい容姿で女性からモテるダーンリー卿だが、しかし中身は薄っぺらで頭の悪い俗物。こんなろくでもない男と結婚すれば、メアリー女王が振り回されるのは目に見えている。それこそがエリザベス女王の真の狙いだった。
「クイン・メリー/愛と悲しみの生涯」 Mary, Queen of Scots (1971)_f0367483_16112713.jpg
このエリザベス女王の目論見はまんまと成功。ハンサムで颯爽としたダーンリー卿に一目惚れしたメアリー女王は、真っ向から反対する兄ジェームズをスコットランドから追放し、晴れてダーンリー卿と挙式を上げることとなる。ところが、すぐにメアリー女王は彼との結婚を後悔するのだった。浅はかで身の程知らずなダーンリー卿は、女王の配偶者に過ぎず権力を持たない「王配」の地位に強い不満を示し、ヒステリーを起こして周囲に八つ当たりするようになったのだ。これほど低俗で愚かな男だったとは。すっかり興ざめしたメアリー女王は、以前にも増してリッチオを贔屓にするようになるのだが、これに地元の領主たちが危機感を抱く。女王は自分たちよりも余所者を信頼していると。
「クイン・メリー/愛と悲しみの生涯」 Mary, Queen of Scots (1971)_f0367483_16105359.jpg
そこで、領主たちはダーンリー卿を味方へ引き込んでリッチオの暗殺計画を実行。ところが、リッチオを殺害した謀反人たちは、この機に乗じてメアリー女王やダーンリー卿の命まで狙う。辛うじて逃げ出したメアリー女王とダーンリー卿は、スコットランド到着時から常に女王の味方だったボスウェル卿(ナイジェル・ダヴェンポート)に助けを求める。そのボスウェル卿の辣腕によって謀反の鎮圧は成功。さすがのダーンリー卿もすっかり大人しくなり、メアリー女王は長男ジェームズを出産する。ところが、ほとぼりが冷めるとダーンリー卿の権力欲が再燃。しかも、女遊びがたたって梅毒を発症してしまったことから、常軌を逸したような言動を暴走させていく。もはやスコットランドにとっても足手まといでしかないダーンリー卿を、なんとかして排除できないものかと画策するメアリー女王とボスウェル卿。一方、エリザベス女王とその側近たちは、後継者である息子を生んだメアリー女王のことを再び危険視するようになっていた…。
「クイン・メリー/愛と悲しみの生涯」 Mary, Queen of Scots (1971)_f0367483_16123837.jpg
ということで、英国史に名高いスコットランド女王メアリーVSイングランド女王エリザベス1世の確執を主軸としつつ、心の赴くがまま愛と情熱に生きようとした悲劇の女王メアリー・ステュアートの生涯を題材にした作品。いつどこで誰に寝首を掻かれるか分からないという、英国宮廷の冷酷非情な弱肉強食の掟を背景としつつ、恋多き女王メアリーの波乱に満ちた数奇な運命をドラマチックに描く作風は『1000日のアン』と似ているが、しかし全体的な印象としては本作の方がだいぶライトに感じられるかもしれない。重厚な歴史劇というよりはソープオペラ風の愛憎メロドラマ。その点で評価はかなり分かれると思うが、しかし歴史的背景にさほど詳しくなくとも楽しめる敷居の低さは高得点であろう。フランス時代のメアリーが実際に暮らしたシュノンソー城やボスウェル卿が居住したハーミテイジ城でも撮影された風光明媚なロケーション、『1000日のアン』でオスカーに輝くマーガレット・ファースがデザインした華やかな衣装などをふんだんに盛り込んだ、豪華絢爛でロマンティックな映像美も大きな見どころ。肩の凝らない歴史エンターテインメントに仕上がっている。
「クイン・メリー/愛と悲しみの生涯」 Mary, Queen of Scots (1971)_f0367483_16091058.jpg
それにしてもまぁ、あまりにも本能に忠実過ぎて狡賢く立ち回るということが出来ず、一度こうと決めたら誰の忠告も聞き入れない強情な性格で、結果的に自らの首を絞めてしまうことになるメアリー女王の猪突猛進ぶりは、エリザベス女王でなくとも「やれやれ…」といった感じですな(笑)。良く言えばロマンチスト、悪く言えば融通の利かない頑固者。建前よりも本音や私情を優先させてしまうところなど、あまり統治者に向いているとは思えなかったりする。一方のエリザベス女王は合理的な現実主義者。何事にも柔軟な態度で臨み、無駄な争いごとは極力避けようとする。なので、初めはメアリーを亡き者にするつもりなど毛頭なかったが、しかし当のメアリー本人が頑固で強情なため、そうせざるを得ない立場に追い込まれてしまう。これらの描写がどこまで史実に基づいているのか分からないものの、観客をハラハラ&ヤキモキさせる要素として十分過ぎるほど機能している。ちなみに、両者が面と向かって対峙するシーンは完全なるフィクション。実際は、お互いに1度も顔を合わせたことがなかったらしい。
「クイン・メリー/愛と悲しみの生涯」 Mary, Queen of Scots (1971)_f0367483_16131394.jpg
誇り高くも初心で世間知らずなメアリー女王にヴァネッサ・レッドグレーヴ、冷静沈着で時に非情な策士のエリザベス女王にグレンダ・ジャクソンという顔合わせも文句なし!特にグレンダ・ジャクソンはタフでパワフルな知性派のイメージがエリザベス1世にピッタリで、当時はエミー賞の主演女優賞に輝くテレビシリーズ『Elizabeth R』('71・日本未放送)でも同じくエリザベス1世を演じたばかりだった。また、前年の『嵐が丘』('70)のヒースクリフ役でブレイクしたばかりのティモシー・ダルトンが、ハムサムなだけで中身の空っぽなクズ野郎ダーンリー卿を演じて抜群にハマっている。エリザベス女王の計算高くて抜け目ない秘書長官ウィリアム・セシル役のトレヴァー・ハワードも、少ない出番ながらインパクトはかなり強烈。さすが、デヴィッド・リーンやキャロル・リードなど英国映画界の巨匠たちに愛された名優である。
「クイン・メリー/愛と悲しみの生涯」 Mary, Queen of Scots (1971)_f0367483_16120401.jpg
そのほか、パトリック・マクグーハンにナイジェル・ダヴェンポート、イアン・ホルムにダニエル・マッセイと、中堅どころの英国俳優たちがズラリと揃う。その中にあって、メアリー女王が贔屓にしたイタリア人の優男リッチオにイアン・ホルムというのはちょっと意外なキャスティング。そのリッチオとダーンリー卿が、実は過去に同性愛の恋人同士だった…という、史実には見当たらない本作独自の設定は、いかにもフリーセックス&ゲイリブの性革命が巻き起こった'70年代らしい要素だと言えよう。
「クイン・メリー/愛と悲しみの生涯」 Mary, Queen of Scots (1971)_f0367483_16094552.jpg
評価(5点満点):★★★☆☆

参考DVD情報(アメリカ盤)※『1000日のアン』とのカップリング
カラー/ワイドスクリーン(2.35:1)/音声:2.0ch Dolby Digital/言語:英語/字幕:英語・フランス語/地域コード:1/時間:131分/発売元:Universal Studios
特典:宣伝用ドキュメンタリー('71年制作・5分)/音楽スコア独立再生機能



by nakachan1045 | 2024-03-09 16:16 | 映画 | Comments(0)

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