人気ブログランキング | 話題のタグを見る

なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画&音楽レビュー日記
by なかざわひでゆき
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

「薔薇のスタビスキー」 Stavisky (1974)

「薔薇のスタビスキー」 Stavisky (1974)_f0367483_17250322.jpg
監督:アラン・レネ
製作:ジャン=ポール・ベルモンド
製作代表:アレクサンドル・ムヌーシュキン
     ジョルジュ・ダンシジェール
製作主任:アラン・ベルモンド
脚本:ホルヘ・センプラン
撮影:サッシャ・ヴィエルニ
美術:ジャック・ソールニエ
衣装:イヴ・サン=ローラン
音楽:スティーブン・ソンドハイム
出演:ジャン=ポール・ベルモンド
   フランソワ・ペリエ
   アニー・デュプレー
   シャルル・ボワイエ
   マイケル・ロンズデール
   ロベルト・ビサッコ
   クロード・リシュ
   ピエール・ヴェルニエ
   マルセル・クヴェリエ
   ヴァン・ドゥード
   ジャック・スピエッセル
   ジェラール・ドパルデュー
   ジジ・バリスタ
   ニエル・アレストリュプ
フランス・イタリア合作/117分/カラー作品




『ボルサリーノ』('70)に『華麗なる大泥棒』('71)、『ラ・スクムーン』('72)に 『おかしなおかしな大冒険』('73)などのフレンチ・アクション映画を次々と大ヒットさせ、名実ともにフランスの国民的スーパースターとして圧倒的な人気を誇った俳優ジャン=ポール・ベルモンドが、『二十四時間の情事』('59)や『去年マリエンバートで』('61)などの芸術映画で名を馳せた巨匠アラン・レネと初めてタッグを組んだ作品である。

題材は'30年代のフランス社会を揺るがせた汚職スキャンダル「スタヴィスキー事件」。手広くビジネスを広げていたユダヤ人の実業家アレクサンドル・スタヴィスキーが、自身の経営する信用金庫を舞台に詐欺を働いていたことが明るみとなり、やがてその詐欺行為に政界や財界の要人が多数関わっていたこと、警察幹部までもが賄賂を受け取っていたことが発覚し、時の政権が2度も総辞職に追い込まれるほどの大事件へと発展したのだ。そのスタヴィスキーをベルモンドが演じた本作は、基本的には当時の彼が得意としていた犯罪映画の系譜に属するものの、しかしその一方でアラン・レネの演出はかなり実験的で時として難解に感じられる。恐らく、いつものベルモンド映画を期待して見に行った観客は少なからず戸惑ったことだろう。

時は1933年。ロシア革命の立役者にして赤軍の創設者でありながら、いわゆる七人組の台頭によって国外追放の憂き目に遭ったレフ・トロツキーとその妻が、政治活動を行わないという条件のもとでフランスへの亡命を許される。夫妻のもとへは大勢の知識人や学生が訪れて歓迎する一方、その動向を常に監視する警察の姿もあった。その頃、スペイン国境付近の小さな都市バイヨンヌの財務顧問として市立信用金庫を経営する実業家アレクサンドル・スタヴィスキー(ジャン=ポール・ベルモンド)は、さらに演劇の劇場や競走馬の厩舎を経営したり、新聞社への出資や武器の売買にも手を出すなど、幅広いビジネスを展開して大成功を収めていた。そんな彼を支えるのが社交界の名士ラオール男爵(シャルル・ボワイエ)を筆頭とする裕福な投資家たち。スタヴィスキーを心から愛する妻アルレット(アニー・デュプレー)もまた、自らの美貌を武器にスペインの革命家モンタルボン(ロベルト・ビサッコ)を誘惑して巨額の投資を取り付けようとするなど、我が身を挺して夫のビジネスをサポートしていた。

ところが、このスタヴィスキーの正体は生粋の詐欺師。信用金庫では盗品や偽造品の宝石を担保に偽国債を大量発行していたほか、彼のビジネスの殆どは政治家や有力者への賄賂で手に入れた利権で成り立っていたのである。しかも、過去には詐欺での逮捕歴があり、そもそもフランス人ですらないユダヤ系ロシア人の移民だった。その事実を知っているのは、右腕的存在の辣腕弁護士ボレリ(フランソワ・ペリエ)や主治医メジー(マイケル・ロンズデール)など極一部の友人のみ。こうした不都合な真実を隠蔽する目的もあって、スタヴィスキーは警察幹部やマスコミ関係者も買収していた。しかし、やがて信用金庫のからくりが当局にバレて担当者が逮捕され、さらに一筋縄ではいかないボニー警部(クロード・リシュ)の執拗な捜査がスタヴィスキーの身辺にも及ぶ…。

1930年代の雰囲気を限りなく忠実に再現するため、カメラワークも当時のスタイルを模倣したというアラン・レネ。それがどれほど功を奏しているのかどうか、いまひとつ分かりかねるところではあるものの、しかし『去年マリエンバードで』などレネ作品に欠かせないジャック・ソールニエによるセット美術、当時ファッション界の風雲児として活躍していたイヴ・サン=ローランのデザインした衣装、そして「スウィーニー・トッド」や「イントゥ・ザ・ウッズ」などブロードウェイ・ミュージカルの作曲家としても名高いスティーブン・ソンドハイムの手掛けた音楽スコアなどが相まって、極めて洗練された優雅でノスタルジックな雰囲気を楽しませてくれる。そこは本作の最大の見どころと言えよう。

ただ、フラッシュバックやフラッシュフォワードを交えながら、唐突に時間軸や視点が切り替わっていく語り口は少々取っつきづらく、そのうえ随所で差し込まれるトロツキー夫妻の亡命生活の様子が観客をさらなる混乱に陥れる。一体、トロツキー夫妻の亡命がスタヴィスキー事件とどう関わっているのか…?と首をひねっていると、スタヴィスキー事件の余波で右派政権が誕生したことやユダヤ系ロシア人の印象が悪くなったことが、結果的にトロツキーのフランスからの追放を招いてしまったと説明される。このことからも、レネ監督がスタヴィスキーの人となりやスタヴィスキー事件の真相にはそれほど興味がなく、むしろその背景にあった権力の腐敗構造や事件がフランス社会に及ぼした負の影響に強い関心を持っていたであろうことが理解できるだろう。恐らく彼は、スタヴィスキー事件がナチス支配下のヴィシー政権へと繋がっていく分岐点と見ていたのではないだろうか。いわば、実験性の強い左派的な政治映画。なるほど、賛否が大きく分かれるであろうことは想像に難くない。

口八丁手八丁の芝居がかった大仰な言動を駆使し、社交界の名士たちを信じ込ませ政財界の重鎮たちを丸め込んだスタヴィスキーに、軽妙洒脱なヒーロー像が持ち味のベルモンドというのは適役。そんな彼にすっかり惚れ込んでしまい、騙されていたことが分かってもなお友情を抱いていたお人好しの老紳士ラオール男爵に、古き良き優雅なフランスを象徴する往年の大スター、シャルル・ボワイエというキャスティングも気が利いている。妻アルレット役のアニー・デュプレーのデカダンな美貌も見目麗しい。そのほか、コクトーの『オルフェ』('50)やフェリーニの『カビリアの夜』('57)でもお馴染みの名優フランソワ・ペリエを筆頭に、『ジャッカルの日』('73)のマイケル・ロンズデールに『陰なき淫獣』('73)のイタリア人俳優ロベルト・ビサッコなど脇役陣も充実。当時まだ駆け出しの若手俳優だったジェラール・ドパルデューが、スタヴィスキーにマトリスコープ(胎児の性別を判定して健康状態を確認する機械)を売り込む発明家の青年役で顔を出しているのも要注目だ。

評価(5点満点):★★★☆☆



参考ブルーレイ情報(日本盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/1080p/音声:2.0ch DHS-HD Master Audio/言語:フランス語/字幕:日本語/地域コード:A/時間:117分/発売元:キングレコード
特典:なし



by nakachan1045 | 2024-03-10 19:13 | 映画 | Comments(0)

カテゴリ

全体
映画
音楽
未分類

以前の記事

2026年 03月
2026年 02月
2026年 01月
2025年 12月
2025年 11月
2025年 10月
2025年 09月
2025年 08月
2025年 07月
2025年 06月
2025年 05月
2025年 03月
2025年 02月
2025年 01月
2024年 12月
2024年 11月
2024年 10月
2024年 09月
2024年 08月
2024年 07月
2024年 06月
2024年 05月
2024年 04月
2024年 03月
2024年 02月
2024年 01月
2023年 12月
2023年 11月
2023年 10月
2023年 09月
2023年 08月
2023年 07月
2023年 06月
2023年 05月
2023年 04月
2023年 03月
2023年 02月
2023年 01月
2022年 12月
2022年 11月
2022年 10月
2022年 09月
2022年 08月
2022年 07月
2022年 06月
2022年 05月
2022年 04月
2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 12月
2021年 11月
2021年 10月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 07月
2021年 05月
2021年 04月
2021年 03月
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 04月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月

お気に入りブログ

なにさま映画評(跡地)

最新のコメント

> Matemuさん ..
by nakachan1045 at 13:14
2024/6/5に発売さ..
by Matemu at 05:08
この映画はデンマーク軍が..
by na at 08:27
ランドマスターは本当にか..
by na at 17:53
> にこらさん コメン..
by nakachan1045 at 01:32
なかざわ様 前にあった..
by にこら at 19:32
DVDリリースされてまし..
by ken at 22:53
> kenさん 書..
by nakachan1045 at 16:23
チプリアーニの作品中でも..
by ken at 11:36
ひでゆきさん、ありがとう..
by na at 16:19

メモ帳

最新のトラックバック

ライフログ

検索

タグ

(544)
(355)
(287)
(269)
(217)
(186)
(135)
(120)
(116)
(108)
(107)
(106)
(106)
(95)
(68)
(60)
(59)
(58)
(58)
(50)
(46)
(45)
(42)
(42)
(41)
(40)
(39)
(37)
(36)
(35)
(34)
(32)
(28)
(26)
(26)
(23)
(21)
(21)
(21)
(21)
(20)
(20)
(19)
(18)
(18)
(18)
(17)
(17)
(15)
(15)
(15)
(14)
(14)
(13)
(11)
(10)
(9)
(9)
(9)
(9)
(8)
(7)
(7)
(7)
(5)
(4)
(4)
(4)
(3)
(3)
(3)
(3)
(3)
(3)
(2)
(2)
(2)
(2)
(2)
(2)
(1)
(1)
(1)
(1)
(1)
(1)
(1)
(1)
(1)
(1)
(1)
(1)
(1)
(1)
(1)

ブログパーツ

最新の記事

DANCE CLASSICS..
at 2026-03-09 00:34
DANCE CLASSICS..
at 2026-03-08 00:53
「1968」 (1968) ..
at 2026-03-07 15:05
「L'Intégrale d..
at 2026-03-06 23:10
DANCE CLASSICS..
at 2026-03-06 00:52

外部リンク

ファン

ブログジャンル

映画
ライター