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なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画&音楽レビュー日記
by なかざわひでゆき
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「The Climax」 (1944)

「The Climax」 (1944)_f0367483_15144047.jpg
監督:ジョージ・ワグナー
製作:ジョージ・ワグナー
戯曲:エドワード・ロック
脚色:カート・シオドマク
脚本:カート・シオドマク
   リン・スターリング
撮影:ハル・モーア
   W・ハワード・グリーン
美術:ジョン・B・グッドマン
   アレクサンダー・ゴリッツェン
音楽:エドワード・ウォード
出演:ボリス・カーロフ
   スザンナ・フォスター
   ターラン・ベイ
   ゲイル・ソンダーガード
   トーマス・ゴメス
   ジューン・ヴィンセント
   ジョージ・ドレンツ
   ルドウィグ・ストッセル
   ジェーン・ファラー
アメリカ映画/86分/カラー作品




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ユニバーサル映画が大ヒット作『オペラの怪人』('43)に続いて放ったミュージカル・ホラー映画である。ハリウッドの8大メジャー・スタジオの中でも、コロムビアやユナイテッド・アーティスツと並んで「リトル3」と呼ばれる弱小スタジオだったユニバーサル。製作する作品も西部劇やホラー、コメディなど低予算のプログラム・ピクチャーがメインだった。そのため、当時はまだ莫大なコストのかかったテクニカラー映画の導入も、ハリウッドの映画会社としては最も遅く、既に各社が'30年代半ばから『虚栄の市』('35)や『オズの魔法使い』('39)、そして『風と共に去りぬ』('39)などのテクニカラー映画を発表していたのに対し、ユニバーサルでは戦時中のアドベンチャー物『アラビアン・ナイト』('42)が最初のテクニカラー映画。その第二弾が『オペラの怪人』だった。もともと同作の続編として企画された本作が、低予算にも関わらずテクニカラー映画となったのも当然の成り行きだったのかもしれない。
「The Climax」 (1944)_f0367483_01442236.jpg
舞台は音楽の都ウィーン。数々の人気オペレッタを上演している王立劇場では、10年前に看板スターだった天才ソプラノ歌手マルセリーナ(ジューン・ヴィンセント)が忽然と姿を消し、そのまま行方知れずとなっていた。彼女の恋人だった劇場専属医フリードリッヒ・ホーナー医師(ボリス・カーロフ)は、ショックと悲しみのあまり精神が不安定となってしまい、いまだに夜な夜な誰もいない劇場を訪れてはマルセリーナの幻影を追っていた。
「The Climax」 (1944)_f0367483_01482880.jpg
ところが、実はこのホーナー医師こそがマルセリーナ失踪事件の犯人。彼女の美貌も美声も自分ひとりだけで独占したいと願ったホーナー医師は、自分と結婚してオペレッタ歌手を引退するようマルセリーナを説得したところ、彼女が恋愛よりもキャリアを選んだことに腹を立てて殺してしまったのだ。マルセリーナの遺体を自宅の秘密部屋へ隠したホーナー医師。彼が精神的におかしくなったのは、愛するマルセリーナが姿を消したからではなく、自分のものになることを拒んだマルセリーナを殺害してしまったから。そのことを知らない周囲の人々は、彼を悲劇の主人公として同情していたのだ。
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そんなある日、劇場オーナーのシーブルック伯爵(トーマス・ゴメス)は、マルセリーナと瓜二つの歌声を耳にしてビックリする。その声の主はソプラノ歌手志望の女学生アンジェラ・クラット(スザンナ・フォスター)。彼女の婚約者で作曲家志望の若者フランツ(ターラン・ベイ)が、叔父である劇場プロンプターのカール(ルドウィグ・ストッセル)に頼み込んで、アンジェラと2人で劇場のレッスンルームを使わせてもらっていたのだ。その才能に強い感銘を受けたシーブルック伯爵。ちょうど、看板スターであるジャーミラ(ジェーン・ファラー)が相手役ロセッリ(ジョージ・ドレンツ)といがみ合い、彼女のわがまま放題に頭を悩ませていたシーブルック伯爵は、アンジェラを王立劇場の次世代スターとしてデビューさせることを決める。
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これに猛反発したのがホーナー医師だった。マルセリーナと瓜二つの美声を持つ歌手が、王立劇場のステージに立つことなど決して許されない!マルセリーナの伝説が汚されてしまうではないか!憤慨するホーナー医師だったが、しかしアンジェラのデビュー公演は大成功を収め、シーブルック伯爵は彼女を本格的に看板スターへと育てることにする。そこで、ホーナー医師は初舞台を終えたアンジェラに声をかけ、「舞台後の規則として喉の状態を検査せねばならない」と言いくるめて自宅の診察室へ連れて行く。疑うことなく診察台に座ったアンジェラに、もう二度と歌えなくなるよう催眠術をかけるホーナー医師。それ以来、アンジェラはホーナー医師の姿を見たとたんに声が出なくなり、リハーサルもままならなくなってしまう。
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一体なぜなのか?原因を究明しようとするフランツ。そんな彼にホーナー医師の秘書ルイーズ(ゲイル・ソンダーガード)が接触する。実は彼女、マルセリーナのお付きだった無二の大親友。ホーナー医師がマルセリーナを殺したに違いないと疑い、その証拠を掴むため秘書となっていたのだ。治療と称してアンジェラを監禁したホーナー医師だが、しかしフランツはルイーズの手引きで彼女の奪還に成功。しかし、彼女が催眠術にかかっていることを知らないフランツは、ステージに立てばきっと声を取り戻すはずだと考え、叔父カールのコネを使ってアンジェラがオーストリア皇帝の前で歌声を披露する御前公演をセッティングしてしまう…。
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ということで、終盤はアンジェラにかけられた催眠術が無事に解かれ、御前公演も成功裏に終わるのだろうか?それとも、御前公演の真っ只中にホーナー医師が劇場へ現れ、皇帝の目の前で声の出なくなったアンジェラが歌手生命を絶たれてしまうのか?という緊迫したサスペンスが展開するわけだが、しかしそもそも自分が殺した恋人マルセリーナと声がよく似ているというだけの理由で、ホーナー医師が全くの赤の他人であるアンジェラにあそこまで執着するだろうか?という根本的な疑問は拭えない。たとえ彼のメンタルが壊れているにしてもだ。どうも、こじつけが過ぎるように感じられて仕方ない。しかも、催眠術はホーナー医師がそこにいないと効力を発揮しないし。なんだ、この中途半端な設定は(笑)。そんなこともあってか、終盤のスリルもサスペンスもいまひとつ盛り上がりに欠けることは否めないだろう。
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ちなみに、エドワード・ロックが1908年に発表した同名舞台劇の映画化ということになっているが、しかし実のところタイトル以外に原作との共通点は殆んどないに等しい。原作は若きソプラノ歌手を巡る三角関係を描いた恋愛メロドラマ。偉大な演出家のもとでスターへと成長したヒロインが、マエストロの息子と愛し合って婚約するものの、しかし突然声が出なくなってキャリアが閉ざされてしまう。で、そこへ現れたのがハンサムで有能な外科医。僅かな望みを賭けた喉の手術が上手くいなかったため、意気消沈したヒロインは外科医と愛のない結婚をしようとしたところ、奇跡的に声が戻ったことからステージに復帰し、最後はマエストロの息子ともゴールインしてメデタシメデタシという筋書きだったという。いやあ、全く違うお話じゃないですか!先述したように、もともと『オペラの怪人』の続編として企画された本作。恐らく、無理やり『オペラの怪人』へストーリーを寄せようして無理が生じてしまったのかもしれない。
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ただ、テクニカラーの魅力を存分に活かした豪華絢爛なセット美術やコスチュームは大きな見どころ。中でも、劇中劇に当たるオペレッタの華麗なステージはなんとも煌びやかで素敵だ。オペレッタ劇場のセットは『オペラの怪人』と同じく、'25年のサイレント版『オペラの怪人』のために作られた巨大なオペラ座セットを使用。それ以外のセットも使い回しが多いようだが、しかしそれでも本作は第17回アカデミー賞で最優秀美術デザイン賞にノミネートされている。また、『オペラの怪人』に続いて音楽を担当したエドワード・ウォードによる楽曲もなかなかの出来栄え。古き良きオペレッタらしい華やかでキャッチーなメロディを楽しませてくれる。
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主演はご存知、ユニバーサル・ホラーのトップスターであるボリス・カーロフ!しかも本作では、殺人を犯すほどの狂おしい愛を暴走させる、いわばゴシックロマン的なヒーローを演じている。これがですね、いつもの怪しげなマッド・サイエンティストや不気味な召使いなどとは一味も二味も違う、エレガントでダンディで高貴な紳士的ムードを漂わせて実に魅力的!やはり、この人は基本的にハンサムなのですよね。で、そのカーロフ演じるホーナー医師に翻弄され、歌手としてのキャリアを断たれそうになるヒロインのアンジェラには、『オペラの怪人』のクリスティーン役で一躍注目されたスザンナ・フォスター。好青年フランツ役のターラン・ベイは「トルコ版ヴァレンティノ」とも呼ばれたトルコ系の二枚目俳優で、当時ユニバーサルがアラビアン・ナイト映画シリーズで売り出していたスター候補生だった。
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さらに、『風雲児アドヴァース』('36)でアカデミー助演女優賞に輝いたゲイル・ソンダーガードが、ホーナー医師の罪を暴くためフランツに力を貸す女性ルイーズ役を好演。どちらかというとミステリアスな悪女役の多かった人だけに、これはちょっと珍しいキャスティングであろう。そのほか、『打撃王』('42)で大リーガー、ルー・ゲーリッグ(ゲイリー・クーパー)の父親役を演じたルドウィグ・ストッセル、大富豪ハワード・ヒューズが売り出そうとした二枚目俳優ジョージ・ドレンツ、『キー・ラーゴ』('48)などフィルム・ノワールの悪役としてよく見る顔だったトーマス・ゴメスらが脇を固めている。
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評価(5点満点):★★★☆☆

参考DVD情報(アメリカ盤)※DVD-BOX「The Boris Karloff Collection」収録
モノクロ/スタンダードサイズ(1.33:1)/音声:2.0ch Dolby Digital Mono/言語:英語/字幕:英語・フランス語/地域コード:1/時間:86分/発売元:Universal Studios
特典:オリジナル劇場予告編



by nakachan1045 | 2024-03-13 01:53 | 映画 | Comments(0)

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