なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧
「Doctor Dracula」 (1983)

ポール・アラトウ
製作:ルー・ソーキン
製作監修:サミュエル・M・シャーマン(サム・シャーマン)
脚本:ポール・アラトウ
セシル・ブラウン
ゲイリー・リースマン
台詞追加:サミュエル・M・シャーマン(サム・シャーマン)
撮影:ゲイリー・グレイヴァー
ロビー・グリーンバーグ
音楽:メアリー・バースタイン
出演:ジョン・キャラダイン
ドナルド・バリー(ドン・バリー)
ラリー・ハンキン
ジョフリー・ランド
スーザン・マクアイヴァー
レジーナ・キャロル
ジェーン・ブルネル=コーエン
ノーマン・ピアース
フィリップ・トゥーバス
トゥウィード・モリス
エミリー・スミス
ヴィック・カーク
ロバート・カー
アメリカ映画/90分/カラー作品


魔術への研究熱が高じてマジシャンへと転職した元大学研究者ジョン・ウェインライト(ラリー・ハンキン)は、催眠術を使って人の心を自在に操ることが出来るため「スヴェンガリの生まれ変わり」を自称している。そればかりか、スヴェンガリに関する研究書まで執筆して華々しい出版記念会を催すのだが、実は彼の肉体には本当にスヴェンガリの魂が宿っていた。悪魔崇拝カルト集団「血まみれの薔薇協会」のメンバーである彼は、黒魔術の儀式によって我が肉体をスヴェンガリに差し出していたのである。彼の著書を発売する出版社社長スティーブン・フィリップス(ノーマン・ピアース)は「血まみれの薔薇協会」初代教祖の生まれ変わり。近年、悪魔のパワーが著しく衰えていることを感じているフィリップスは、人一倍生命力にあふれた若い処女のストリッパー、トリルビー(ジェーン・ブルネル=コーエン)を生贄にしようと考え、彼女を教団へ招き入れるようウェインライトに命じる。

一方その頃、近隣ではヴァンパイアの仕業としか思えない不可解な殺人事件が多発し、美しい女性ばかりが犠牲となっていた。そんな中、何年も前に亡くなった最愛の母親の死をいまだに受け入れられない女性ステファニー(スーザン・マクアイヴァー)は、父親スティーブン・エリオット(ドン・バリー)の友人である「血まみれの薔薇協会」の現教祖ハドリー・ラドクリフ(ジョン・キャラダイン)からウェインライトを紹介してもらう。母はまだどこか生きている気がする。不思議な力を持つウェインライトさんなら、何らかの方法を考えて母と引き合わせてくれるはず。そう考えたのである。しかし、自分はマジシャンであって神ではない、死んだ人間と再会する方法など分からないと、ウェインライトはステファニーの「母親と会わせて欲しい」という依頼を慇懃無礼に断るのだった。

母親は絶対に生きている、なんとしてでも母親に会いたいという願いに取り憑かれ、日に日に常軌を逸していく娘の言動を見過ごせなくなった父親のエリオット氏は、以前パーティでラドクリフから紹介された精神科医アナトール・グレゴリオ(ジェフリー・ランド)のことを思い出す。いかにも胡散臭い印象の彼を怪しんでいたエリオット氏だったが、しかし今はそんなことを言っている余裕などなかった。藁にも縋る思いでグレゴリオ医師に相談するエリオット氏。ステファニーのセラピーを快諾するグレゴリオ医師だったが、実は彼の正体こそ近隣で起きている連続殺人事件の犯人、伝説の吸血鬼・ドラキュラ伯爵その人だったのである…!

シーンによってフィルムの質感や映像の雰囲気が違うことからも察せられるように、実は既存の映画に追加撮影と再編集を施して別の映画に仕立ててしまった本作。そも基になったのはポール・アラトウ監督のホラー系ソフトポルノ映画『Lucifer's Women』('74)である。オリジナルは'70年代のオカルト・ブームや新興宗教ブームに影響を受けた作品で、スヴェンガリの生まれ変わりを自称するマジシャンのウェインライトが、悪魔崇拝カルトの教祖フィリップスの魂を転移させる器として、処女のストリップダンサーであるトリルビーを黒ミサの生贄とするべく近づくも、やがて彼女のことを愛してしまう…というお話。明らかにホラー要素よりもエロス要素の多い作品で、大胆なヌードや濡れ場がテンコ盛りだった。

で、'74年に封切られたものの殆ど陽の目を見ずに終わった『Lucifer's Women』の権利を安く買い上げ、テレビ局向けに放送権を販売しようと考えたアダムソンとシャーマンのコンビ。しかしテレビで放送するには盛りだくさんのエロシーンが邪魔になる。ということで、オリジナル版の映像をザックリと半分くらいに削ってしまい、その代わりとして吸血鬼ドラキュラにまつわる新たなプロットを新たなキャストで追加撮影。新旧の映像を再編集で上手いこと工夫して織り交ぜ、全く別のヴァンパイア映画へと生まれ変わらせたというわけだ。なので、ウェインライトとトリルビーのストーリーラインはオリジナル版、グレゴリオ医師ことドラキュラ伯爵とステファニーのストーリーラインが追加撮影版。幸いだったのは、オリジナル版でウェインライトを演じた俳優ラリー・ハンキンを追加撮影版でもキャスティングできたことで、おかげで2つのストリーラインを違和感なくひとつにまとめることが出来ている。まあ、厳密に言うと一部で再編集に起因するストーリー展開の齟齬も見受けられるのだけれど。

例えば、冒頭のマジックショーでウェインライトの助手を務めた美女メアリーは、なぜか中盤でウェインライトと初めて知り合うことになっている。これは、オリジナル版で最後の方に出てきたマジックショー・シーンを、新しい脚本の都合で冒頭へ動かしてしまったために発生した珍現象(笑)。せっかくオリジナル版のラリー・ハンキンを引っ張り出してきて、なおかつ新旧映像のファッションやヘアメイクやセットも似たような印象に統一していて、なんだかアル・アダムソンにしては仕事ぶりが上出来じゃないかと感心したのだけれど、こういうところで詰めの甘さが露呈してしまうのがまたアダムソンらしいと言えよう。

追加撮影が行われたのは'80年初旬。オリジナル版当時は無名の舞台俳優だったラリー・ハンキンも、この頃には『アルカトラズからの脱出』('79)の囚人チャーリー役で顔を知られるようになっていた。主演にクレジットされているのは、アダムソン映画の常連組でもある往年の名優ジョン・キャラダイン。その友人エリオット氏を演じているドン・バリーは'40年代のB級西部劇スターで、本作の撮影終了から数か月後に別居中だった3番目の妻へのDV疑惑で警察に事情聴取を受け、その直後に拳銃自殺を遂げてしまった。エリオット氏の娘ステファニー役のスーザン・マクアイヴァーは、ディーン・マーティン専属のコーラスガールとして結成され、一時は冠番組を持つほど人気だった女性パフォーマンス集団「ザ・ゴールドディガーズ」のリーダーだった女性エンターテイナー。ドラキュラ伯爵の犠牲になるお喋りで陽気なお色気マダム、ヴァレリーを演じているレジーナ・キャロルはアダムソン監督夫人である。

ってなわけで、アル・アダムソン作品としてはそれなりに見栄えの良い映画ではあるのだが、まあ、半分くらいはオリジナル版のポール・アラトウ監督の功績であろう。ただし、ホラー映画としてはちっとも怖くないし、ぶっちゃけ雰囲気は悪くないけど面白くもない。アメリカでは'83年にサンフランシスコのローカルテレビ局で初放送され、その後はビデオやDVDでも発売されてきた本作。日本では残念(?)ながら、いまだに未公開のままである。

参考DVD情報(アメリカ盤)
カラー/スタンダードサイズ(1.33:1)/2.0ch Dolby Digital Mono/言語:英語/字幕:なし/地域コード:1/時間:90分/発売元:Image Entertainment
特典:『Lucifer's Women』オリジナル劇場予告編/ホラー・ライブショー「House of Terror」プロモーション映像/関連作品予告編集
アマゾン商品リンク
by nakachan1045
| 2024-10-10 08:58
| 映画
|
Comments(2)
Commented
by
くさのま
at 2024-10-10 15:55
いつも楽しく拝見しております。
今回は評価がついていませんでしたが、星二つぐらいでしょうか? ホラー好きとしては観てみたいところではありますが…。
今回は評価がついていませんでしたが、星二つぐらいでしょうか? ホラー好きとしては観てみたいところではありますが…。
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