なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧
「Sono Sartana, il vostro becchino(俺はサルタナ、お前の死の天使)」 (1969)

製作:アルド・アドバーティ
パオロ・モッファ
原案:ティト・カルピ
脚本:ティト・カルピ
エンツォ・デラクイーラ
撮影:ジョヴァンニ・ベルガミーニ
音楽:ヴァスコ・ヴァシル・コジュチャロフ
エルシオ・マンクーゾ
出演:ジャンニ・ガルコ
フランク・ウォルフ
クラウス・キンスキー
ゴードン・ミッチェル
エットーレ・マンニ
サル・ボルジェーゼ
レナート・バルディーニ
ホセ・M・トーレス
リック・ボイド(フェデリコ・ボイド)
トゥリオ・アルタムラ
ブルーノ・ボスケッティ
ジョヴァンニ・ペトルッチ
ロレンツォ・ピアーニ
フランコ・ペスチェ
イタリア映画/103分/カラー作品
ジャンゴやリンゴと並ぶマカロニ・ウエスタンの名物キャラクター、サルタナを主人公にした公式シリーズの第2弾である。もともとはアンソニー・ステファン主演の『砂塵に血を吐け』('66)に登場した悪役キャラだったサルタナ。同作が当時の西ドイツで大ヒットを記録し、中でもジャンニ・ガルコ演じる悪党サルタナが評判になったことから、サルタナを主人公に据えたシリーズ第1弾『Se incontri Sartana prega per la tua morte(サルタナに会ったら己の死を祈れ)』('68)が誕生したのである。
こうして悪役からヒーローへと出世を遂げたサルタナは、それに伴ってイメージも大幅に刷新。演じるジャンニ・ガルコ自身のアイディアを取り入れつつ、ニヒルでドライでクールでシニカルなユーモア精神の持ち主で、どこからともなく現れては狡猾な頭脳と大胆なトリックで常に敵の先を行き、愛用の超小型リボルバーなどの秘密兵器を駆使しながら悪党どもを蹴散らしていく、全身黒づくめのお洒落でスタイリッシュな正体不明の凄腕ガンマンへと生まれ変わった。作品自体もジェームズ・ボンド映画的な軽妙洒脱さがトレードマーク。当時のスパイ映画ブームからの影響も濃厚だった。
今回はサルタナのニセモノが現れる。西部の田舎町で銀行強盗が発生。ノース・ウェスタン銀行の支店にお尋ね者ビル・コクラン(フェデリコ・ボイド)の死体を持ち込んだ賞金稼ぎが、窓口で懸賞金の受け取りを申し込んだところ、死んでいるはずのコクランが起き上がって銀行員に拳銃を突きつける。厳重な警備の隙をつくための芝居だったのだ。とっさに銀行員が鳴らした警報ベルを聞いて駆け付けた警備員も、なんと全員が扮装した銀行強盗団のメンバー。激しい銃撃戦の末に強盗犯たちは金庫から現金30万ドルを奪い去るのだが、しかし主犯格の賞金稼ぎは仲間全員を殺して現金を独り占めにする。生き残った支店長は主犯格が有名な賞金稼ぎのサルタナだったと証言。事件はたちまち大きな話題となり、お尋ね者サルタナには1万ドルという破格の懸賞金がかけられたのである。
これに怒り心頭なのは当のサルタナ(ジャンニ・ガルコ)本人。銀行支店長から偽サルタナが自分と服装がソックリだったこと、しかし顔まではよく見ていなかったこと、犯行現場にサルタナが愛用する小型拳銃の薬きょうが残っていたことを聞いた彼は、昔なじみの仲間バディ・ベン(フランク・ウォルフ)に何か有益な情報がないか尋ねたところ、強盗団が犯行時に使ったというカラー・スモークを製造したのはブッチ・ダイナマイトに違いないと教えられる。すぐさまブッチ・ダイナマイトのもとを訪れたサルタナだったが、しかし既に自殺と見せかけて殺されていた。そこへ襲いかかる賞金稼ぎ。相手はサルタナの旧友シャドー(ホセ・M・トーレス)だ。多額の負債を抱えたシャドーは、懸賞金1万ドルに目がくらんでサルタナを狙ったのだが、しかしあえなく敗れてしまう。死の間際にサルタナへ謝罪したシャドーは、偽サルタナに仲間もろとも殺されたはずのビル・コクランがまだ生きていること、ホット・アイアンの町で保安官に逮捕されて拘留されていることを伝えて息絶える。
すぐさまホット・アイアンを訪れ、わざと保安官に捕まって留置所へぶち込まれたサルタナ。隣の留置所に入っているコクランに偽サルタナが何者なのか問い詰めるも、しかし報復を恐れるコクランは口をつぐむばかりで、その隙に敵の差し向けた殺し屋によって狙撃されてしまう。コクランが最後に言い残した小さな町ポーカー・フォールズに答えがあると確信したサルタナ。そこには、サルタナが愛用の小型拳銃とその弾丸を特注している道具職人オメロ・クラウン(トゥリオ・アルタムラ)が住んでいたのだ。
小型拳銃は俺だけの特注品だ。いったい俺以外の誰に売ったんだ?と激しく問い詰めるサルタナ。すっかり恐れをなしたクラウンは、地元の酒場経営者バクスター・レッド(エットーレ・マンニ)に小型拳銃を売ったと白状する。よそから来て古い酒場を買収したバクスターは、保安官フェテンテ(サル・ボルジェーゼ)と組んで違法ビジネスに手を出しているらしい。果たして、このバクスター・レッドこそが偽サルタナなのか?そうこうしているうちに、サルタナと腐れ縁のホット・デッド(クラウス・キンスキー)やデゲイヨ(ゴードン:ミッチェル)などの賞金稼ぎが続々とポーカー・フォールズに集まってサルタナの首を狙い、町を裏で牛耳る判事(レナート・バルディーニ)もまたサルタナが現金30万ドルを隠し持っていると睨んで身辺を探ろうとする…。
大西部にその名を轟かせる凄腕ガンマン、サルタナのニセモノが暗躍するという本作のコンセプトは、なんちゃってジャンゴやなんちゃってリンゴなどのパチモノ映画が量産されたマカロニ・ウエスタンへの大いなる皮肉とも言えよう。俳優フランコ・ネロの名声を一躍高めたジャンゴ、同じくジュリアーノ・ジェンマの当たり役となったリンゴ。商魂たくましいイタリアの映画プロデューサーたちは、それらの人気キャラを全く別の役者に演じさせた非公式シリーズ映画を次々と世に送り出した。なにしろ当時のイタリア映画界では、売れた映画を寄ってたかってパクりまくるなんぞ当たり前の光景でしたからな!そういえば、セルジオ・レオーネ監督の「ドル箱三部作」でクリント・イーストウッドが演じた「名無しの男」だって、よくよく考えてみれば数えきれないほどのマカロニ映画でコピーされている。本シリーズのサルタナも御多分に漏れず。シリーズ3作目ではジョージ・ヒルトンが代役を務めたほか、ジェフ・キャメロンやファビオ・テスティ、ウィリアム・バーガーなどがサルタナを演じた非公式シリーズ映画も多数存在する。だいたい本家サルタナ役のジャンニ・ガルコだって、なんちゃってジャンゴを演じたパチモノ俳優たちのひとりだしね。
前作のジャンフランコ・パロリーニから監督をバトンタッチしたのは、アンソニー・アスコットことジュリアーノ・カルニメオ。パロリーニが打ち出した軽妙洒脱でスタイリッシュな路線を継承しつつ、さらにナンセンスでバカバカしいユーモアをたっぷりと盛り込むことで、よりポップでモダンでオシャレな西部劇アクションに仕上げている。暴走する馬車の荷台に乗り込んだサルタナが、次々と襲い来る大勢の賞金稼ぎたちを相手に激しい銃撃戦を演じる場面では、なんとサルタナ視点の主観カメラを交えながらその一部始終を捉えるなど、大胆な技巧を凝らした臨場感あふれるアクション・シーンの数々にも目を見張る。エンツォ・G・カステラーリやアルベルト・デ・マルティーノのアクション映画でお馴染みのカメラマン、ジョヴァンニ・ベルガミーニによるダイナミックなカメラワークも然ることながら、'60~'70年代にかけてのルチオ・フルチ作品に欠かせない編集者だったオルネッラ・ミケーリのリズミカルでアップテンポな編集がまた見事!これぞまさしく職人技である。
さらに、粋でいなせでニヒルなアンチヒーロー、サルタナを演じるジャンニ・ガルコのカッコ良いことときたら!もともと青春映画の2枚目スターだった甘いマスク、全身黒づくめのスマートでダンディなファッション、そしてちょっとキザでユーモラスなサルタナの立ち振る舞い。その全てが実にバランスよくまとまっており、さながら西部劇版ジェームズ・ボンド的な魅力を発揮している。脇を固めるキャストも豪華なクセモノ俳優ばかり。付かず離れずでサルタナに加勢する飄々とした風来坊のバディ・ベンにはフランク・ウォルフ、サルタナとは腐れ縁の賞金稼ぎにして賭博師ホット・デッドにクラウス・キンスキー、長年に渡ってサルタナをライバル視してきた賞金稼ぎデゲイヨにゴードン・ミッチェル、表向きは酒場経営者だが裏で違法ビジネスを仕切るバクスター・レッドにエットーレ・マンニ、そのバクスター・レッドと組んでいる汚職保安官にサル・ボルジェーゼと、マカロニ・ウエスタンに欠かせないコワモテの役者がズラリと揃うのは壮観だ。また、「サルタナ」シリーズの名物である好々爺フランコ・ペスチェが、ゴースト・タウンの町長を自称する浮浪者の老人役で顔を出しているのも見逃せない。
1作目と同様に日本では劇場未公開、テレビ未放送、ビデオソフト未発売という本作だが、海外ではこれまでに幾度となくビデオソフト化されている。現在はイギリスに本社を置くArrow Videoからシリーズ全作を収録したブルーレイ・ボックスがアメリカとイギリスで発売中。本篇はオリジナルのカメラネガから2K解像度で修復されており、フィルムらしい質感を残したクリアできめ細やかな高画質に仕上がっている。特典には俳優サル・ボルジェーゼと脚本家エルネスト・ガスタルディのインタビューを収録。数えきれないほどのマカロニ・ウエスタンにスタントマン&俳優として出演したボルジェーゼは、それゆえ本作のことは殆んど記憶にないらしく、インタビューでは自身のキャリア全般と思い出深い作品について語っている。また、超売れっ子の脚本家だったガスタルディはノークレジットで脚本のリライトに携わっていたそうで、著作権のルールが緩くて何でもありだった当時のイタリア映画界の裏事情などを詳しく語っている。どちらも本作には直接関係のない話ばかりだが、しかし往年のイタリア産B級娯楽映画のファンには興味深いはずだ。
評価(5点満点):★★★★☆
参考ブルーレイ情報(イギリス盤)※5枚組BD-BOX「The Complete Sartana」収録
カラー/ワイドスクリーン(2.35:1)/1080p/音声:1.0ch DTS-HD Master Audio/言語:イタリア語・英語/字幕:英語/地域コード:B/時間:103分/発売元:Arrow Video
特典:マカロニ・ウエスタン研究者C・コートニー・ジョイナーとヘンリー・パークの音声解説/俳優サル・ボルジェーゼのインタビュー('18年制作・約24分)/脚本家エルネスト・ガスタルディのインタビュー('18年制作・約19分)/スチル・ギャラリー
アマゾン商品リンク
アメリカ盤BD-BOX(リージョンA)
イギリス盤BD-BOX(リージョンB)
by nakachan1045
| 2025-02-01 01:48
| 映画
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