なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧
「モグラ人間の叛乱」 The Mole People (1956)

製作:ウィリアム・アランド
脚本:ラズロ・ゴログ
撮影:エリス・カーター
特撮:クリフォード・ㇲティント
音楽監修:ジョセフ・ガーシェンソン
出演:ジョン・エイガー
シンシア・パトリック
ヒュー・ボーモント
アラン・ネイピア
ネストール・パイヴァ
フィル・チャンバース
ロッド・レッドウィング
ロビン・ヒューズ
フランク・C・バクスター
アメリカ映画/77分/モノクロ映画


ご存知の通り、『魔人ドラキュラ』('31)と『フランケンシュタイン』('31)の大成功によってホラー映画をお家芸としていたユニバーサル。やがて粗製乱造によってユニバーサル・ホラーの人気は下火となっていくわけだが、そんな折にSF映画のブームが勃発したのだから勿怪の幸い。ジャック・アーノルド監督の『それは外宇宙からやって来た』('53)を皮切りに、ユニバーサルは製作者ウィリアム・アランドの指揮下でSF映画の量産体制に入る。中でも同社が得意としたのは、ユニバーサル・ホラーの実績を活かした世にも恐ろしいモンスターが登場するSFホラー映画の数々。『大アマゾンの半魚人』('54)や『世紀の怪物/タランチュラの襲撃』('55)などは代表格だと思うが、失われた文明を巡る伝説と地底人の恐怖を描いた本作『モグラ人間の叛乱』のそのひとつだ。

映画は南カリフォルニア大学教授フランク・C・バクスターのイントロダクションから始まる。我々が住むこの地球の表面については、過去100年間で多くの事実が解明されてきました。今や謎に包まれた地域はごく一部にしか過ぎません…と話を始めるバクスター教授。しかし、地球の内側についてはどうでしょうか?と続ける彼は、ジョン・クリーヴ・シムズやサイラス・リード・ティードが19世紀に唱えた地球空洞説について図解を交えながら説明したうえで、これから始まる映画はあくまでもサイエンス・フィクション=空想科学ではありますが、しかし見終わった後には単なる作り話以上の何かを感じてもらえるでしょう…と締めくくる。

アカデミアの権威に解説させることで物語の信憑性を高めることが狙いの演出なわけだが、しかしバクスター教授の専門は地球物理学でもなければ天文学でもない英文学。なおかつ当時は数多くのバラエティ番組に文化人枠で出演する人気テレビ・タレントだった。いやあ、なんとも眉唾ですな(笑)!まあ、そもそも地球空洞説というのはエドガー・ライス・バローズやエドガー・アラン・ポーなどのファンタジー小説で持て囃された疑似科学なので、英文学教授が解説を担当するという人選自体は特に問題ないのだけれど、しかしあくまでも「疑似科学」でしかないことは胸に留めておかねばならないだろう。

で、ここからが物語の始まり。アジア某国で発掘作業を行っていた考古学者のベントリー博士(ジョン・エイガー)とべラミン博士(ヒュー・ボーモント)は、およそ5000年前の地層から1枚の石板を発見する。古代シュメール文明の時代の物だ。そこには楔文字で偉大な王シャルーについて記されていたが、しかし石板の一部が欠けているため詳細は分からなかった。すると、発掘チームの一員であるラファージュ教授(ネストール・パイヴァ)が重大なヒントを思い出す。ギルガメッシュ王の残した文書に、忽然と地上から姿を消した謎の王国に関する記述があった。確か、その王の名前がシャルーだったはずだ。さらに判読可能な部分の楔文字を読み進めると、この石板を持ち去った者にはシュメール神話の女神イシュタルによって天罰が下るという。その時、発掘現場の近くにあるクヒタラ山を震源とする地震が発生する。

幸いにも地震による被害はなし。天罰だなんてバカバカしい…とベントリー博士らが苦笑いしていると、地元の少年がクヒタラ山のふもとで古代シュメール文明の灯油ランプを発見する。どうも地震の際に山頂から落ちてきたようだった。そこにはシュメール文明版「ノアの箱舟」と呼ぶべき出来事が記されていた。太古の昔にメソポタミア一帯が大洪水が見舞われ、大勢の親族や奴隷、家畜などを船に乗せて避難したシャルー王は、雪の降り積もった陸地へと辿り着いたのだそうだ。なるほど、幻の王国が地上から忽然と姿を消した理由はこれだったのか。恐らく、雪の降り積もった陸地とはクヒタラ山の山頂のことであろう。きっとクヒタラ山には今も失われた王国の遺跡が眠っているはずだ。そう考えたベントリー博士はすぐさま探検隊を編成し、標高2万フィートの山頂を目指すことにする。

幾多の困難を乗り越えながらクヒタラ山の山頂へと辿り着いた探検隊の一行。そこには女神イシュタルを祀る神殿がそびえ立っていた。やはりここに王国があったのか!思わず歓喜の声をあげるベントリー博士たち。ところが、辺りを見回しても神殿以外には何もない。これは一体どういうことなのだろうか。博士たちが首をかしげていると、スチュワート博士(フィル・チャンバース)の足元の地面が割れて博士が落下してしまう。どうやら地中の奥深くに洞窟があるようだ。スチュワート博士を救出するため洞窟へと降りていく一行。ところが、その瞬間に土砂崩れが起きて登山ガイドのナザール(ロッド・レッドウィング)が死亡し、ベントリー博士とべラミン博士、ラファージュ教授の3人が生き埋めとなってしまう。

よく見ると、洞窟の反対側には人の手で作られたと思われる通路が続いていた。懐中電灯を頼りに奥へと進んでいった3人は、その先に壮大な古代地下都市の遺跡を発見する。思わず言葉を失うベントリー博士たち。ところが、そんな彼らに地中から這い出てきたモグラ人間たちが襲いかかる。実は、シャルー王たちの末裔である地底人たちが、今も古代の生活様式を守りながら生きながらえており、ミュータントと化した奴隷=モグラ人間たちを労働力として使っていたのだ。どこからともなく現れた博士たちを警戒して処刑しようとする地底人たち。逃げ遅れてモグラ人間に殺されたラファージュ教授。とっさにベントリー博士が懐中電灯の光を当てたところ、地底人たちは悲鳴を上げて逃げ出す。何千年もの間、薄暗い地底世界で暮らしてきたためアルビノ化した彼らは、強い光に対する耐性がなかったのである。

光を自在に操るとは、きっと女神イシュタルの使者に違いない!そう考えた地底人の王(アーサー・D・ギルモア)はベントリー博士とべラミン博士を歓待し、侍女アダド(シンシア・パトリック)を専属の召使いとして付ける。地底人の世界で異端扱いされているアダドは、彼らの祖先と同じ地上人の体質を持っていた。要するにアルビノ化していなかったのである。お互いに惹かれ合うベントリー博士とアダド。一方、ラファージュ教授の死体を発見した司祭エリヌー(アラン・ネイピア)は、博士たちが女神イシュタルの使者などではないことに気付き、彼らを殺して最強の武器である懐中電灯を奪い取ろうと画策するのだが、そんな折に長年虐げられてきたモグラ人間たちが叛乱を起こす…。

言ってみれば、『大アマゾンの半魚人』の古代遺跡アドベンチャー版みたいなもの。しかも、その『大アマゾンの半魚人』の特殊メイク・チームのスタッフだったジャック・キーヴァンが、モグラ人間スーツのデザインと制作を手掛けている。『スーパーマンと地底人間』('51)を筆頭に、当時の低予算SF映画ではヒューマノイド化した地底人間=Mole People(モグラ人間)は定番モンスターだったのだが、しかしデザイン的にも技術的にも粗雑なものが多かった。少なくともその中では、本作に登場するモグラ人間はまずまずの完成度。クロースアップで見るとマスクの造形もクオリティの高いことが分かる。さすがはモンスターで一時代を築いたユニバーサル映画だけのことはありますな。

ノアの箱舟の由来が古代メソポタミアにあった…という設定は、ユダヤ教およびヘブライ聖書の起源を古代バビロニア神話に求める「汎バビロニア主義」をヒントにしたのだろう。大洪水によって失われた幻の王国が、今もなおアジアの秘境で地下都市として脈々と生きながらえていたという筋書きにはロマンがある。ただ、そうした背景事情を説明する前置き部分がちょっと長くなり過ぎたため、肝心のメインアトラクションであるモグラ人間の登場が遅く、80分未満というコンパクトな尺にも関わらず冗長に感じられるところは惜しい。これ見よがしに記録映像を流用した山岳アドベンチャー・シーンも少々興ざめ。地下都市の全景を映したマットペイントが、どこからどう見ても雑な「イラスト」なのも意図せず笑いを誘う。監督は映画編集者出身のヴァージル・ヴォーゲル。これが監督デビュー作だった。確かにモンスターの出来栄えは悪くないけれど、それでもなお色々と低予算の粗が目立つ映画であることは否めない。

主演は『半魚人の逆襲』('55)や『世紀の怪物/タランチュラの襲撃』でもお馴染み、ユニバーサルが誇る(?)B級SF映画スターのジョン・エイガー。その相棒役のヒュー・ボーモントも、推理ミステリー「私立探偵マイケル・シェイン」シリーズに主演したB級映画俳優である。紅一点のシンシア・パトリックは当時のユニバーサルが売り出そうとした専属女優だが、鳴かず飛ばずのまま消えてしまった。そのほか、脇役にはテレビ版『バットマン』('66~'68)の執事アルフレード役で有名なアラン・ネイピアや『大アマゾンの半魚人』シリーズのネストール・パイヴァ、西部劇映画のスタントマンとして有名な先住民俳優ロッド・レッドウィングなどの名バイプレイヤーたちが顔を揃えている。

評価(5点満点):★★☆☆☆
参考DVD情報(アメリカ盤)※6枚組DVD-BOX「The Classic Sci-Fi Collection: Volume 1&2」収録
モノクロ/スタンダードサイズ(1.33:1)/音声:2.0ch Dolby Digital/言語:英語/字幕:英語・フランス語/地域コード:1/時間:77分/発売元:Universal Studios
特典:オリジナル劇場予告編
アマゾン商品リンク
ブルーレイ単品(アメリカ盤)
by nakachan1045
| 2025-02-03 07:55
| 映画
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