OST「非情の標的」 Revolver (1973) Ennio Morricone

tracklist

1. Un Amico 2:36

2. Revolver 12:40

3. Anna 2:08

4. Un Amico (voice: Daniel Berretta) 2:36

5. Quasi Un Vivaldi 1:55

6. Pericolo Per Anna 1:49

7. Inseguimento e Fuga 3:40

8. In Un Bar 2:24

9. Rapimento 2:29

10. In Un Altro Bar 2:08

11. Un Amico (Synth Version) 2:45

music composed and arranged by Ennio Morricone.

conducted by Bruno Nicolai

published by EMI General Music.

Licensed by GDM Music.

2000 Dagored

イタリア映画音楽のマエストロ、エンニオ・モリコーネの手掛けたポリス・アクション映画のサウンドトラックである。いやあ、これがとにかく素晴らしいのなんのって！とてもアクション映画のために書かれたスコアとは思えぬほど甘くて切なくてロマンティックなテーマ曲「Un Amico」#1は、『ペイネ 愛の世界旅行』('74)や『ラ・カリファ』('70)などの系譜に属するメロウ系モリコーネの真骨頂。突き抜けるようなストリングスとクラシカルなオルガンの奏でるハーモニーは鳥肌モノの美しさ。その他の楽曲も見事なまでに充実しており、サントラ・アルバムそのものが『ある夕食のテーブル』('69)や『Maddalena』('71)などと並ぶモリコーネの隠れた傑作である。

映画本編は当時イタリアで流行していた「ポリッツィオテスキ（別称スパゲッティ・クライム）」映画のひとつ。最愛の妻（アゴスティナ・ベッリ）を誘拐された刑務所長（オリヴァー・リード）が、人質解放の交換条件として囚人の強盗犯（ファビオ・テスティ）を脱獄させたところ、やがて政治的な陰謀へと巻き込まれていく。政界の汚職やマフィアによる誘拐ビジネスが社会問題となった、'70年代イタリアの暗い世相を如実に映し出した作品。『血斗のジャンゴ』('67)や『狼の挽歌』('70)でもお馴染み、ハードボイルドなアクション映画を得意とした名匠セルジオ・ソリーマ監督らしい、ポリティカル・スリラー風の冷酷非情な犯罪映画に仕上がっている。

モリコーネがソリーマと組むのはこれが６本目。『狼の挽歌』では実験ジャズ風のクールで激渋なサウンドがカッコ良かったが、本作では組曲的なタイトルトラック「Revolver」#2にて同様のジャジーでサスペンスフルなサウンドを堪能させつつ、ガラッと雰囲気を変えたテーマ曲「Un Amico」#1の美しいメロディを全面に押し出している。フランス版『ジーザス・クライスト・ザ・スーパースター』に主演したフレンチポップ歌手ダニエル・ベレッタによるヴォーカル・バージョン#４も悪くないのだが、やはりこの曲はインスト・バージョンで聴くのがベストであろう。また、ヴィヴァルディをモチーフにした華麗なバロックポップ・チューン「Quasi Un Vivaldi」#５も秀逸！これはモリコーネ自身もお気に入りだったのか、後にアルド・ラドー監督のエロティック映画『蒼い本能』('81)のサントラでも使いまわしされている。

公開当時は日本とイタリアでレコード発売された本作。'90年代半ばにドイツで初めてCD復刻されたのを皮切りに、これまでに世界各国で繰り返し再発されてきた。筆者の手元にあるのは'00年にイタリアのインディペンデント系レーベル、Dagoredから出たリマスター版CD。テーマ曲「Un Amico」のシンセサイザー・バージョンがボーナス・トラックとして収録されている。その後、さらにボーナス・トラックを増やした21曲入りの豪華版がイタリアや日本、スペインなどで発売されており、なおかつCDだけでなくサブスク・サービスでも全曲を楽しむことができる。

評価（５点満点）：★★★★★