DANCE CLASSICS: File 32「Say It, Say It」 (1985) E.G. Daily

tracklist

A1. Say It, Say It (Extended Version) 6:52

B1. Say It, Say It (Single Version) 4:32

B2. Say It, Say It (Dub Version) 4:40

produced by Jellybean for Jellybean Productions Inc.

arranged by Stephen Bray and Toni C.

(P)&(C) 1985 A&M Records.

ティム・バートン監督の『ピーウィーの大冒険』('85)のヒロイン、ドティ役や『ストリート・オブ・ファイヤー』('84)の追っかけ女子ベイビー・ドール役、『ヴァレー・ガール』('84)のお洒落なカリフォルニア女子ロリー役など、'80年代に数々のカルト映画に出演して根強いファンを持つ女優エリザベス・デイリー。'90年代以降は『ラグラッツ』('91～'04)の主人公トミー・ピックルズ役や『パワーパフガールズ』('98～'05)のバターカップ役など、アニメ声優としても大変な人気を博した。そんな彼女がかつて、E・G・デイリーの名前で歌手としても活躍したことを記憶しているファンも少なくないだろう。

もともとの本業は役者。本名のエリザベス・ガットマン名義で'78年に映画デビューし、再開発で立ち退きを迫られた老人たちを救おうと立ち上がる女性を演じたインディーズ映画『Street Music』('81)で初主演。歌手としての仕事は、ジョルジオ・モロダーが手掛けたブライアン・デ・パルマ監督のギャング映画『スカーフェイス』('83)の挿入歌を、エリザベス・デイリー名義で歌ったのが最初かと思われる。さらに、ジョルジオ・モロダー・ファミリーのハロルド・ファルターマイヤーが総監督を担当し、師匠モロダーもサポート役に加わった映画『誘惑』('84)のサントラにも参加。こうした映画関連の仕事で歌手としての実績を作ったデイリーの、正式なデビューシングルが本作「Say It, Say It」だった。

プロデュースを担当したのはマドンナの出世作「Holiday」をヒットさせ、「Lucky Star」や「Like a Virgin」などの12インチ・リミックスも手掛けたジェリービーン。しかも、アレンジは同じくマドンナの名曲「Into the Groove」や「Express Yourself」を作曲・プロデュースしたスティーブン・ブレイということで、本作も思いっきりマドンナを意識した仕上がりである。基本路線はマドンナの「Holiday」か「Into the Greoove」か。いやむしろ、マドンナが作曲とゲスト・ボーカルに参加し、スティーブン・ブレイがアレンジを手掛けたジェリービーンの「Sidewalk Talk」が一番近いかもしれない。ただ、ラテン風味のキャッチーなシンセリフはティナ・Bの「Honey to a Bee」や、フリーズの「I.O.U.」などの初期フリースタイルを彷彿とさせる。要するに、'80年代半ばのダンス音楽トレンドを凝縮したような楽曲だ。それでいて、ツンデレ小悪魔的なE・G・デイリーのハスキーなベビーボイスが、当時巷に溢れていたマドンナ風ダンスポップと一線を画すような魅力を楽曲に与えている。このインパクト強めな声質、なるほど確かにアニメ声優向きかもしれませんな！

ビルボードのシングル・チャートでは最高70位と揮わなかったものの、しかしダンス・チャートで見事にナンバーワンの座を獲得。キューブリックの『ロリータ』('60)にオマージュを捧げたミュージック・ビデオも向こうでは話題になったようだ。日本では確かドーナツ盤シングルしか発売されなかったが、筆者は渋谷のタワレコ旧店舗でアメリカ盤12インチを購入したと記憶している。通常のシングル・バージョンは、様々な'80年代ヒット曲コンピレーションCDに収録されてきたが、しかし12インチ用のエクステンデッド・バージョンは残念ながら殆どデジタル化されていない。筆者の知っている範囲だと、スペインの中堅レーベルBlanco Y Negroが'06年に出したコンピレーションCD「I Love Disco 80's Vol.2」に入っており、実際に筆者の手元にもあるのだが、どうもアナログからのデジタル・リマスターではないかと思われる。

評価（５点満点）：★★★★☆