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なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画&音楽レビュー日記
by なかざわひでゆき
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「続・少林寺列伝」 少林五祖 (1974)

「続・少林寺列伝」 少林五祖 (1974)_f0367483_20252470.jpg
監督:チャン・チェ
製作:チャン・チェ
脚本:ニー・クァン
撮影:クン・ムートー
武術:ラウ・カーリョン
   ラウ・カーウィン
音楽:チェン・ユンユー
出演:デヴィッド・チャン
   ティ・ロン
   アレクサンダー・フーシェン
   チー・クァンチュン
   メン・フェイ
   フェン・コーアン
   リアン・チャージェン
   チャン・タオ(コン・ドー)
   ツァイ・ホン
   ワン・ルンウェイ
   リー・チェンピャオ
   リュー・チャーフィー
香港映画/104分/カラー作品




キン・フー監督と並ぶ武侠映画の巨匠チャン・チェ監督が、'74年に相次いで発表した少林寺映画4本のうちのひとつである。清朝の時代に反体制活動家の拠点だとして激しい弾圧を受け、政府の差し向けた軍隊によって焼き払われたと言われる福建省の南少林寺。どうやら歴史学的には眉唾な話らしいのだが、しかし中国では古くより史実と信じられているそうで、様々な民間伝承や武侠小説の題材となって来た。チャン・チェ監督による'74年の少林寺映画群も同様。いずれも、「南少林寺の焼き討ち」に材を得ているのだ。中でも、焼き討ちを生き延びて少林拳を中国全土に広めたとされる5人の修行僧たち、いわゆる「少林五祖」の伝説を描いたのが、日本では勝手に『少林寺列伝』(’76)の続編として紹介された本作『続・少林寺列伝』('74)だった。

時は満州族の興した清朝の治世。朝廷は南少林寺へ5人の強豪な武術家を殺し屋として送り込み、不意打ちによって寺を焼き払ってしまう。大半の僧侶は焼け死ぬか、5人の殺し屋が率いる軍隊によって虐殺されてしまい、僅かな者たちだけが命からがら逃げ延びた。そのうちのひとりが洪家拳の始祖とされるホン・シーグァン。広東省へ逃れたホン・シーグァンは、同じく武術家である盟友ファン・シーユーと合流する。それとは別に5人の若き修行僧たちも逃げ延び、後に「少林五祖」と呼ばれるようになった…というのが本編オープニングに流れるナレーションおよびイントロダクションの主な内容だ。

清朝政府による南少林寺の焼き討ちが起きたのは17世紀末とも18世紀半ばとも言われるが、しかし確たる裏付けや証拠があるわけではないという。また、オープニングで言及される武術家ホン・シーグァンも盟友のファン・シーユーも、南少林寺で修業を積んだとされる伝説上のカンフー・ヒーロー…つまり、どちらも実在したかどうか定かではない人物である。もちろん、本作の主人公である「少林五祖」も同様。そうした事実を踏まえて考えると、本作の内容を歴史劇として額面通りに受け取るのは憚られるだろう。むしろ、これは民間伝承を基にした純然たるファンタジーとして楽しむべき作品。なお、このホンとファンを主人公に据えた作品が、やはり'74年にチャン・チェ監督が発表した少林寺映画『嵐を呼ぶドラゴン』である。

閑話休題。どうやら本作の設定では、南少林寺の僧侶たちは「反清復明(少数派の満州族による清朝を倒して、多数派の漢民族による明朝を復興させるという革命スローガン)」の反体制組織と通じているらしく、焼き討ちで生き残った5人の修行僧は各地の「同志たち」と合流して協力を仰ぎ、清朝の差し向けた刺客たちに対して復讐を果たそうとする。メンバーはリーダー格である聡明な若者フー・デディ(デヴィッド・チャン)に寡黙でストイックなサイ・デジョン(ティ・ロン)、堅物で血気盛んなリー・シーカイ(チー・クァンチュン)に温厚で優しいファン・ダホン(メン・フェイ)、そしてお調子者で無鉄砲な最年少マー・チャオシン(アレクサンダー・フーシェン)の5名。どうやら、敵は南少林寺の内情を正確に把握したうえで襲撃を計画した様子だ。恐らく、我々の内部に敵方のスパイがいるに違いない。だとすれば、なるべく目立たないよう慎重に行動するべきだろう。そう考えた5人は、各自がバラバラに動いて味方の勢力を集めることにする。

そんな「少林五祖」を是が非でも討ち取らんと足取りを追うのは、清朝政府の命を受けて南少林寺を焼き討ちしたチェン大将(コン・ドー)にジャン・ジンギュ(フェン・コーアン)、ジャン・シャン(リアン・チャージェン)、バオ・ユーロン(ツァイ・ホン)、そして南少林寺の修行僧にして清朝のスパイだったマー・フーユー(ワン・ルンウェイ)の5人。中央政府に応援を要請しようという意見も出たが、しかし5人で手柄を独占すれば立身出世も夢じゃないというマー・フーユーの提案に他の4人も賛同する。「少林五祖」の5人が別々に行動していると知って、自分たちも5手に分かれて追跡する悪党ども。しかし、行く先々で反体制派レジスタンスの妨害を受けて獲物を取り逃がす。

一方、マー・チャオシンと偶然を装って再会する兄貴分のマー・フーユー。相手はまだまだ未熟な若者ゆえ、丸め込むのは簡単だと思われた。俺も復讐計画に参加したいので仲間に加えてくれ、だから反体制派の暗号サインを教えて欲しいと持ち掛けるフーユー。「反清復明」の反体制勢力は、仲間内でしか分からない独自の暗号サインを使って、お互いの身分を確認したり連絡を取り合ったりしていたのだ。しかし、勘の鋭いチャオシンはフーユーこそが仲間を裏切った清朝のスパイだと見抜き、逃げようとしたところを捕らえられてしまった。その現場を目撃した反体制派の密偵によって、マー・フーユーこそが裏切り者であり、その事実に気付いたマー・チャオシンが捕虜となったことが仲間内に伝わる。チャオシンを救うために敵の本拠地を襲撃する「少林五祖」の仲間と反体制派勢力。なんとかチャオシンの救出には成功したものの、しかし敵方のほうが自分たちよりも武芸に長けていると痛感した5人衆は、ひとまず身を隠して過酷な武術修行に日夜励みつつ、来るべき決戦に備えて用意周到な復讐作戦を準備していく…。

ってなわけで、様式化されたストーリー展開は極めてシンプル。正義の側が5人なら悪の側も5人ということで、それぞれが対になる宿敵を見定めて武芸の技を切磋琢磨し、最終的には5組同時の集団シングルマッチへとなだれ込んでいく。とりあえず、南少林寺を巡る民間伝承にある程度の馴染みがある観客層へ向けて作られているため、筆者のような門外漢にとって分かりづらい部分もないではないのだが、だからといって知識がなければ楽しめないというわけでは全くない。まあ、正直なところ脚本は予定調和の連続。名脚本家ニー・クァンにしては凡庸と言わざるを得ない出来だが、しかしその欠点を補って余りあるのが登場人物たちの人間臭いキャラクターと、それを演じる豪華な主演スター陣の顔ぶれであろう。

「アジアの映画王」と呼ばれた爽やかな好青年デヴィッド・チャンに香港カンフー映画界随一のクールな美青年ティ・ロン、ハーフ顔のハンサムな容姿にジャッキー・チェンのようなチャームを兼ね備えたアレクサンダー・フーシェンという、ショウ・ブラザーズの若き看板スターがズラリと勢ぞろい。そこへ、当時フーシェンとのコンビで売っていたストイックな格闘家チー・クァンチュン、さらにはソフトな甘いマスクの優男メン・フェイという、知名度では劣るものの極めて魅力的なイケメン俳優たちが加わる。このキャスティングが実に見事!適材適所で役柄のイメージとピッタリと合っているため、それぞれに長所も短所もある登場人物たちの親しみやすさがより一層のこと際立つのだ。中でも、憎めない弟キャラのマー・チャオシンを生き生きと演じるアレクサンダー・フーシェンの愛くるしさときたら!しかも、当時まだ無名の新人だったリュー・チャーフィーまで、ファン・ダホンを救うために自ら進んで犠牲となる高潔な反政府レジスタンス役として登場。義兄であるラウ・カーリョンとラウ・カーウィンが武術指導を担当していることから、そのコネで出演したのだろうと思われる。

血の繋がりよりも濃厚な男同士の激しくも熱い友情、大義のために散っていく男たちの壮絶な死にざま、そして悲壮感すら漂う男同士の生命と名誉を賭けた最終決戦と、とにかく男・男・男づくしの賑々しさは、これぞまさしくチャン・チェ映画の醍醐味!といった感じですな。オープニングにおける主人公たちのカンフーアクションが、いまひとつ迫力不足でちょっと心配になったものの、しかしこれは恐らく彼らが武術家としてまだ未成熟であるという設定を反映した演出なのだろう。実際、クライマックスの最終決戦では手に汗握るハードでダイナミックなカンフー・アクションを存分に堪能させてくれる。

日本では劇場未公開にしてテレビ未放送。'06年に発売された日本盤DVDが本邦初上陸で、その際に『少林寺列伝』の続編として紹介されたわけだが、実際はこちらの方が先に作られている。海外でもこれまでに幾度となくビデオソフト化されており、'21年にアメリカとイギリスで発売されたショウ・ブラザーズ作品12本収録の豪華BDボックス「Shaw Scope: Volume One」に含まれる形でブルーレイ化もされている。本編は'00年代に香港で制作されたHDリマスター版を使用。一部で修復しきれていないフィルムの傷などが散見されるものの、しかしトータルでは文句なしのクリアな高画質に仕上がっている。1.0chのモノラル音声も極めて明瞭。ただし、使い回しコンテンツの含まれた特典映像には少々不満が残るかもしれない。

評価(5点満点):★★★★☆


参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)※BDボックス「Shaw Scope: Volume One」収録
カラー/ワイドスクリーン(2.35:1)/1080p/音声:1.0ch DTS-HD Master Audio/言語:北京語・英語/字幕:英語(北京語版用)・英語(英語版用)/地域コード:ALL/時間:109分/発売元:Arrow Films/Celestial Pictures
特典:アジア映画専門家トニー・レインズによるチャン・チェ評('21年制作・約37分)/俳優コン・ドーのインタビュー('05年制作・約23分)/テレビ番組「Elegant Trails: Ti Lung」('03年制作・約9分)/テレビ番組「Elegant Trails: David Chiang」('03年制作・約8分)/アメリカ公開版オープニング・クレジット(約10分)/各国版予告編集(アメリカ版・西ドイツ版・リバイバル公開版)/イメージ・ギャラリー(69点)



by nakachan1045 | 2026-01-12 10:59 | 映画 | Comments(0)

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