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なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画&音楽レビュー日記
by なかざわひでゆき
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「L. A. バウンティ」 L.A. Bounty (1989)

「L. A. バウンティ」 L.A. Bounty (1989)_f0367483_00235292.jpg
監督:ワース・キーター
製作:シビル・ダニング
   マイケル・W・リートン
製作総指揮:S・C・デイシー
原案:シビル・ダニング
脚本:マイケル・W・リートン
撮影:ゲイリー・グレイヴァー
プロダクション・デザイン:シェーン・ネルソン
音楽:ハワード・リース
   スターリング(ジョン・スターリング)
出演:シビル・ダニング
   ウィングス・ハウザー
   ヘンリー・ダロウ
   レノア・カスドーフ
   ロバート・ヘインリー
   ヴァン・クアトロ
   フランク・ダブルデイ
   ボブ・マイナー
   J・クリストファー・サリヴァン
   ティーガン・ウェスト
   ロバート・クォリー
アメリカ映画/85分/カラー作品




世の東西を問わず「カルト映画の女王」と呼ばれる女優は今も昔も少なくないが、しかしシビル・ダニングほど長年に渡って絶大な人気を誇った「カルト映画の女王」はなかなかいないだろう。ブロンドのゴージャスで妖艶で野性的な美貌と、適度に鍛え上げられたシャープでグラマラスな肉体美、そして不敵な面構えの女王様然としたサディスト的カリスマ性の持ち主。オーストリア出身で'70年代の西ドイツやイタリアのB級娯楽映画における脱ぎ要員として頭角を現し、『エアポート'80』('79)や『メテオ』('79)のゲスト出演的な端役を経て、ロジャー・コーマン印のB級SFアクション『宇宙の7人』('80)のクールな女戦士役に抜擢されてアメリカでもブレイク。以降、『チェーンヒート』('83)や『マリブ・エクスプレス』('85)といった低予算アクションから『ハウリングⅡ』('85)のようなホラー映画に至るまで、多種多様なジャンルのエクスプロイテーション映画に次から次へと出まくった。

決して芝居が上手いわけではなかったこともあって、出演作の中には単なる客寄せパンダとして呼ばれただけの代物も多かったシビル・ダニング。しかし、それはそれで裏を返すと、彼女がカルトなB級映画の世界では「興行価値の高いスター」だったという証でもある。全米各地で開かれるジャンル系映画のコンベンションでサイン会なんかやれば、それこそどこへ行っても大勢の熱烈な男性ファンが殺到して長蛇の列。一般的な知名度は低いものの、しかし一部のマニア界隈では間違いなくトップスターのひとりだった。そんな彼女が自らストーリー原案とプロデュースを手掛け、巨悪に立ち向かうタフで寡黙な女賞金稼ぎを演じた作品が『L.A. バウンティ』('89)である。

舞台は現代のロサンゼルス。「政界で最もセクシーな男」などと呼ばれ、間近に迫ったロサンゼルス市長選挙でも最有力候補と見做されている政治家マイク・ローズ(ロバート・ヘインリー)が、支持者集会での演説を終えて帰宅したところ、待ち伏せていた覆面武装グループによって拉致されてしまう。その場に居合わせた妻ケリー(レノア・カスドーフ)は、抵抗した際に犯人グループのひとりの覆面を剥ぎ取って顔を見てしまったため命を狙われるが、しかし突然乗り込んできた正体不明のブロンド美女によって間一髪のところを救われる。ちょうどそこへ通報を受けた警官隊が到着。ショットガンを手にしたブロンド美女は黙ってその場を立ち去るのだった。

マイク・ローズを誘拐した覆面武装グループを裏で操るのは、表向きは美術品の輸入会社「ゴシック・インポーツ」を営む犯罪王カヴァナー(ウィングス・ハウザー)。普段は芸術家を気取って絵画を描いているカヴァナーは、ゲーム感覚で人殺しを楽しむイカレたサイコパスである。今回は多額の身代金を狙って有力政治家の誘拐を企んだ様子だ。一方、警察よりも早く事件現場へ駆けつけた正体不明のブロンド美女は、当局に指名手配された凶悪犯ばかりを狙う女賞金稼ぎルガー(シビル・ダニング)。実はかつてロサンゼルス市警の刑事だったルガーは、麻薬密輸事件に絡んでカヴァナーを追い詰めようとしたところ、自身のミスが原因で相棒刑事を死なせてしまった。それ以来、カヴァナーへの激しい復讐心に燃えていた彼女は、模範囚として早期釈放されたカヴァナーとその手下たちの動きを逐一監視していたのである。

ロス市長選最有力候補が武装グループに誘拐されるというショッキングな事件は、当然ながら世間を大いに騒がせる。テレビのニュース番組では、被害者の妻ケリーが犯人グループのひとりの覆面を取って素顔を見ていたこと、彼女が翌日の午後にダウンタウンの警察署へ向かうことが報じられた。テレビを見ていたカヴァナーは大激怒。顔を見られた部下ジャックマン(ヴァン・クァトロ)に、責任を取ってケリーを殺せと命じる。翌日、若い男性刑事にエスコートされ、覆面パトカーで警察署へ向かうケリー。そこへジャックマンとその仲間たちが襲い掛かり、若い男性刑事は射殺されてしまうものの、やはりテレビのニュースを見て警戒していたルガーが助けに入る。ケリーを自宅代わりのキャンピングカーへ避難させ、ジャックマンに伝言を託してカヴァナーをおびき出そうと考えたルガーだったが、しかしカヴァナーは自分の代わりに武装集団を彼女のもとへ送り込む。女ひとりでチンピラどもを一網打尽にしたルガー。しかし、名前も身分も目的も明かさない彼女に不信感を抱いたケリーは逃げてしまう。

すぐに警察へ相談したケリー。ベテラン刑事チャンドラー(ヘンリー・ダロウ)はルガーのことをよく知っており、信頼できる相手だとケリーに説明するものの、とはいえ自らの手で誘拐事件を解決しようと考えて動き出す。世間から事件への関与を疑われている現職のバロウズ市長(クリストファー・サリヴァン)からも、チャンドラー刑事は一刻も早い犯人逮捕をと迫られていた。カヴァナーからの指示通り身代金をボストンバッグに詰め、指定されたマルホランド・ドライブへと車を走らせるケリー。後部座席にはチャンドラー刑事が隠れており、さらには万が一のため警官隊を乗せた装甲車も後ろに控えていたのだが、しかし待ち伏せていた武装グループは警官隊を装甲車ごと爆殺し、チャンドラー刑事にも銃弾を浴びせて身代金とケリーの両方を奪い去る。敵のアジトへ監禁されたケリー。決着をつけるため乗り込んでくるルガー。そこで彼女たちは、今回の誘拐事件の思いもよらぬ黒幕の存在をカヴァナーの口から知らされる…!

もともと、当時アメリカでブレイクしたばかりだったシビル・ダニングと、彼女の専属マネージャーであるS・C・デイシーの2人が、'84年頃から温めていた企画だったという本作。ひとまずはアメリカ進出に成功したダニングだったが、しかしそれでもお色気要員的な脇役や特別ゲストの仕事が多かったため、恐らく「アクション映画女優シビル・ダニング」のショーケースとなるような主演映画を自分たちの手で作ろうと考えたのだろう。一時は、ヌードグラビア問題で栄冠をはく奪された史上初の黒人ミス・アメリカ、ヴァネッサ・ウィリアムズとダニングの共演で、女性版『48時間』に仕立てるというアイディアもあったそうだが、しかし必要な資金が集まらずに長いことお蔵入りしていたらしい。

その後、ダニングはインターナショナル・ヴィデオ・エンターテインメント(後のLIVEエンターテインメント)が発売するビデオ・シリーズ「Sybil Danning's Adventure Video」のホステスを務めることとなる。これは、エドワード・ドミトリク監督がイギリスで撮った『狼たちの影』('75)やトニーノ・リッチ監督のマカロニ・コンバット映画『ラッシュ/地獄からの脱出』('83)、フィリピン産の忍者アクション『ニンジャ・ウォリアーズ』('85)などなど、主にヨーロッパやアジアの低予算B級アクション映画を米国市場向けに紹介するというブランド・シリーズ。どの作品も本編の前後に解説ビデオが添えられているのだが、そのホステス役をダニングが務めたのである。合計で24タイトルが発売されるほど好評を博したという同シリーズ。そのおかげで、本作の製作資金を集めることが出来たと言われている。

ダニング自身の書いたストーリー原案を、ウィングス・ハウザー主演の傭兵アクション『ブラック・テロリスト/人質奪還』('86)を手掛けたマイケル・W・リートンが脚色。被害者の妻が犯人グループの素顔を見ていたとのこと!どうやら明日の午後、ダウンタウンの警察署へ出向いて情報提供するらしいです!なんてテレビのニュースで報道したら、そりゃどう考えたって犯人グループに狙われるでしょうよ!という特大級の突っ込みどころを含め、まあ、いろいろと首を傾げるような場面があるにはあるものの、しかし物語の前提となるルガーとカヴァナーの過去の因縁をあえて殆ど描写せず、会話の中でそれとなく仄めかすという程度で済ませたのは実に賢明だったように思う。これが凡百の映画であれば、冒頭のプロローグとか途中のフラッシュバックとかで過去エピソードを挟み込んで、結果的に冗長な印象を与えるだけになってしまうところだが、本作では観客に最小限の情報しか与えないことで逆に想像力を刺激し、よりスピーディで説得力のある物語に仕上げているのだ。そもそも、全体的に余計な説明や前振りの類がほとんどナシ。小気味良いくらいサクサクと話が進む。脚本の出来は決して悪くない。

加えて、カメラの動きや照明の位置などの見せ方にとことん拘ったスタント・アクションにも要注目。低予算ゆえに残念ながらスケールを追求することは叶わないが、しかしその代わりに創意工夫を凝らした遊び心溢れるカーアクションやガンバトルの演出で大いに楽しませてくれる。もちろん、インディペンデントのB級アクション映画ゆえ予算がかかっていないのは一目瞭然。安っぽく見えてしまうことは否めないものの、そこをなんとかアイディアでカバーしようという姿勢と心意気に好感が持てるのだ。監督は『地獄の犬/ロトワイラー』('83)や『ジェイル・ヒート/脱獄番外地』('84)など、'80~'90年代に低予算アクション映画を量産したワース・キーター。正直言って、ろくな映画を残していない人なのだが、その中で恐らく本作はベストな出来栄えなのではないかと思う。

で、主人公の女バウンティ・ハンターを演じるシビル・ダニングだが、演技はともかくとしてガン・アクションの立ち振る舞いや見栄えは悪くない。そもそも台詞がほとんどないうえに、問答無用で敵を追い詰めていくターミネーターみたいなキャラクターですからな。そのうえ、シンシア・ロスロックやミシェル・ヨーみたいに格闘技の心得があるわけでもない。なので、演技力や身体能力よりもビジュアルで勝負。拳銃やライフルを構えた際の、ポーズの美しさとカッコよさだけで全編を押し通していく。トレードマークのヌードを封印したのは賛否別れるところだと思うが、それでもシビル・ダニング・ファンであれば大いに満足できるはずだ。

ヒロインの宿敵カヴァナー役に、『ザ・モンスター』('82)のサイコパス役がインパクト強烈だったウィングス・ハウザーというのも絶妙なキャスティング。『バットマン』('89)のジャック・ニコルソンや『ジョーカー』('19)のホアキン・フェニックスを彷彿とさせるような怪演を、それこそ嬉々として披露してくれる。いやあホントに、これだけの実力と個性を持った役者が、結果的に大成できなかったというのは実に惜しい。それ以外の脇役はあまりパッとしない地味な顔ぶれだが、ジョン・カーペンター映画の常連組フランク・ダブルデイがカヴァナーの子分役で顔を出していたり、『吸血鬼ヨーガ伯爵』('70)シリーズで有名なロバート・クォリーが麻薬王役で少ない出番ながらも爪痕を残していたりと、ジャンル系映画マニアには嬉しい役者が顔を出していたりする。そういえば、'80年代のB級アクション映画に欠かせないネイティブ・アメリカン系の名物スタントマン、ブランスコム・リッチモンドが本作にもワンシーンだけ出てきましたな。

アメリカでは一部の映画館で上映されたと言われているが、しかし具体的な興行記録は残されていないとのこと。なので、実際はビデオストレートも同然だったのだろう。テープだけでなくレーザーディスクでも発売されたそうだが、恐らく制作サイドが期待したほどのセールスにはならなかったのか、当時よりシビル・ダニング本人が熱望していたという続編映画は実現せず。ただし、女賞金稼ぎルガーを主人公にしたコミック版が'15年に発売されている。日本では劇場未公開のVHS発売オンリー。今のところ本邦では円盤化されていないが、アメリカでは'20年にブルーレイでリリースされている。本編ソースの具体的な情報は定かでないものの、ブルーレイ用に新しく制作されたというHDマスターはまずまずの仕上がり。部分的にフィルムの細かい傷や汚れが若干目立つものの、しかし全体的にはきめ細やかでシャープな印象である。重量感のあるステレオ音声も悪くない。特典ゼロという超シンプル仕様だけが惜しまれる。

評価(5点満点):★★★☆☆


参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/1080p/音声:2.0ch DTS-HD Master Audio/言語:英語/字幕:英語/地域コード:A/時間:85分/発売元:Scorpion Releasing/MGM
特典:なし



by nakachan1045 | 2026-01-21 23:45 | 映画 | Comments(0)

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