なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧
「豪快!マルコ・ポーロ」 Marco Polo (1962)

ピエロ・ピエロッティ
製作:エルマンノ・ドナーティ
ルイジ・カルペンティエッリ
製作総指揮:ピエロ・ドナーティ
原案:ピエロ・ピエロッティ
オレステ・ビアンコーリ
脚本:オレステ・ビアンコーリ
ピエロ・ピエロッティ
ドゥッチオ・テッサリ
アントワネット・ペルヴァン
脚本協力:エンニオ・デ・コンチーニ
エリアナ・デ・サバタ
撮影:リカルド・パロッティーニ
美術:アウレリオ・クルニョーラ
衣装:マリオ・ジローシ
音楽:アンジェロ・フランチェスコ・ラヴァニーノ
出演:ロリー・カルホーン
谷洋子
ロバート・ハンダー(クラウディオ・ウンダリ)
カミーロ・ピロッテ
ピエール・クレッソイ
マイケル・チョウ
ティエン=ホン(タイニー・ヨン)
ポイン・ピン・サム
アントニオ・チャンチ
ジャコモ・トーハン
パオラ・ファルキ
アンナ・マエストリ
ビアンカ・ピヴィドーリ
フランコ・レッセル
イタリア・フランス合作/104分/カラー作品
'50年代末~'60年代半ばにかけてイタリアで量産されたスペクタクル史劇映画。イタリア本国ではペプラム映画、英語圏ではソード&サンダル映画と呼ばれたそれらの作品群は、ヘラクレスやサムソンなど主に古代ギリシャや古代ローマの神話に出てくる英雄を主人公にしたヒロイック・ファンタジー映画だったわけだが、しかしブームの成熟期に入るとさすがにネタが尽きてしまったのか、とりあえずヒーローと呼べるようなキャラクターを手あたり次第に題材として取り上げていく。それこそ、ロビン・フッドに怪傑ゾロにアリババにモンテ・クリスト伯に女帝エカテリーナ、さらには騎士団に海賊にコサックにアマゾネスにヴァイキングにと文字通り何でもござれ(笑)。「東方見聞録」で有名な冒険家マルコ・ポーロを活劇ヒーローに仕立てた本作『豪快!マルコ・ポーロ』('62)もそのひとつである。
時は1270年。数々の女性と浮名を流したプレイボーイの商人マルコ・ポーロ(ロリー・カルホーン)は故郷のヴェネチアを離れ、かつて亡き父親ニコロや叔父マテオが訪れたという東洋の大国・中国を目指して旅に出る。その途中で中東某国を訪れた彼は、男子禁制のハーレムに忍び込んで死刑判決を受けた中国人の若者チュー・リン(マイケル・チョウ)を助ける。中国へ行くに当たってちょうど通訳が必要だったし、そのうえ警備の厳重なハーレムへの侵入に成功したというのは彼が有能な証拠だからだ。やがて中国へと差し掛かったマルコとチュー・リン。暴漢に襲われている高貴な美女を救った2人は、以前に父親と叔父が世話になったという洞窟の仏教寺院を訪れて泊めてもらう。
寺院には先客がいた。中国を支配するモンゴル帝国の皇帝クビライ・ハン(カミーロ・ピロッテ)の甥っ子クダイ(ピエール・クレッソイ)の軍隊である。モンゴル帝国ではクビライが年老いたのをいいことに、その権威を笠に着た家臣たちが私利私欲のために民衆を抑圧していた。伯父クビライのことは尊敬しているが、しかし民を虐める奴らには我慢ならない。正義感の強いクダイは部下を集めてパルチザンを結成し、モンゴル帝国に対して反旗を翻したのだ。勇敢な君も一緒に戦わないかと誘われたマルコだが、しかしクダイの高い志を評価しつつも丁寧に断る。自分はあくまでも一介の商人に過ぎないからだ。
やがて北京へ到着したマルコは、チュー・リンの叔母が経営する料理屋へ立ち寄ったところ、モンゴル軍が店へ乱入して法外な税金を取り建てようとする。軍隊の横暴ぶりに腹を立てて追い出そうとするも、多勢に無勢で逮捕されてしまうマルコ。牢屋に入れられた彼は、そこで大勢の庶民が不当逮捕され拷問を受けている様子を目の当たりにする。すると、旧友の息子マルコ・ポーロの来訪を知った皇帝クビライからの使者が登場。その場で解放されたマルコとチュー・リンの2人は、クビライの客人として宮廷へ招かれる。そこでクビライに謁見したマルコは、皇帝の隣に座る姫君アムロイ(谷洋子)をひと目見てビックリする。暴漢から救った美女その人だったからだ。
ハンサムで勇敢でチャーミングなマルコに恋心を寄せるアムロイ。侍女タイオウ(タイニー・ヨン)はチュー・リンと惹かれあう。民衆への弾圧を行う家臣や軍隊を取り締まるようクビライに進言し、逆賊のレッテルを張られた甥っ子クダイと和解することを勧めるマルコ。すると、クビライの右腕である忠臣モンカ(クラウディオ・ウンダリ)の提案で、マルコがクダイとの和平交渉を任されることとなる。ところが、出発したマルコとチュー・リンをモンカの手下たちが襲撃。そう、民衆を弾圧する黒幕は他でもないモンカだったのだ。
しかも、美しきアムロイ姫に横恋慕するモンカは、彼女を無理やり自分のものにしようと画策していた。そこで己の死を偽装したマルコは、チュー・リンを伴って秘かに宮廷へと舞い戻り、アムロイ姫とタイオウを救出して洞窟の仏教寺院に匿う。しかし、モンカの一味によってアムロイ姫は拉致され、皇帝クビライまで囚われの身となってしまった。そこで、山奥に住む老人が調合したという新発明「火薬」を手に入れたマルコは、それを使った新たな武器を開発してクダイ率いる反乱軍へ持ち込み、宿敵モンカの一味を倒すべく立ち上がる…!
ってなわけで、実在のマルコ・ポーロがアジアへ出発したのは1271年のこと。なので時代設定はだいたい合っているのだが、しかし当時の彼はまだ10代の少年にしか過ぎず、なおかつ父親ニコロや叔父マテオに付き添っての遠征旅行だった。当然ながら、彼が女好きのプレイボーイだったなんて記録もなし。モンゴル皇帝クビライに気に入られたのは確かに事実とされているが、しかし悪代官からモンゴルの民衆を救うために戦ってなどいないし、もちろんクビライの姫君と恋仲になったりもしていない。これは歴史上の人物をネタにしただけの完全なるフィクション。要するに作り話である。
当たり前だが、作り話であること自体には全く問題がない。あくまでも娯楽映画ですからね。むしろ本作の場合は、せっかくの作り話でありながら思い切りの足りないところが問題であろう。どうせならもっと荒唐無稽に突っ走れば良かったものを、どうにもこうにも中途半端な印象を受けてしまうのだ。恐らく予算との兼ね合いもあったのだろう。見せ場であるはずの合戦シーンもかなり小ぢんまりとしており、クライマックスの群衆パニックもいまひとつ迫力が足りない。端的に言って地味。監督には地元イタリアのピエロ・ピエロッティに加え、当時ヨーロッパへ拠点を移していたハリウッドの娯楽職人ヒューゴ・フレゴネーズが名を連ねているが、どうやらフレゴネーズはまだ監督経験の浅かったピエロッティの補佐役を任されただけらしい。なるほど、数々のB級娯楽映画で鳴らした大ベテランのフレゴネーズをしても、ピエロッティの力量不足は補えなかったということか。
その一方で、13世紀の北京を再現した大掛かりなオープンセットや壮麗な王宮セットの出来栄えはなかなか立派だし、王侯貴族の豪華絢爛な衣装や中国歌劇一座のコスチュームも良く出来ている。かなり「本物」を研究しているはずだ。洞窟に建てられた仏教寺院の幻想的な美しさも一見の価値あり。ただし、これらのセットも衣装も、実はもともと別の映画のために作られたもの。それが、モンゴル支配下の中国で古代ローマの英雄マチステが大暴れするという、巨匠リカルド・フレーダの荒唐無稽かつアクション満載のスペクタクル史劇『Maciste alla corte del Gran Khan(偉大なカーンの宮廷のマチステ)』('61)。こちらは本作と違って、ストーリー的にもかなり面白い。ちゃんとお金をかけた娯楽大作という印象だ。美術や衣装にも多額の予算を注ぎ込んでいたらしく、さすがに1本だけで取り壊すのは勿体ないということで、同じプロデューサー陣の手掛けた本作でも再利用されたのである。おかげで、少なくとも見栄えの良い映画にはなったと言えよう。
主人公マルコ・ポーロ役はハリウッドのB級西部劇スター、ロリー・カルホーン。日本の映画ファンにはマリリン・モンローと共演した『帰らざる河』('54)でお馴染みだろう。モンローとは『百万長者と結婚する方法』('53)でも共演していたが、こちらはモンローではなくベティ・グレイブルの相手役だった。本作の当時はユニバーサルから独立して製作会社を立ち上げるも上手くいかず、新興メディアであるテレビに新たな活路を求めるなど迷走していた時期。セルジオ・レオーネ監督の『ロード島の要塞』('61)をきっかけに2年間ほどヨーロッパへ拠点を移したのだが、本作はその短い欧州滞在中に出演した映画のひとつだった。モンゴル帝国の姫君アムロイを演じているのは、恐らく日本で最初の国際派スター女優・谷洋子。フランスを拠点にハリウッドやイギリス、ポーランド、ドイツ、カナダ、そして日本など世界中の映画で活躍したのだが、残念ながら昨今は母国の日本ですらその名前を知らない映画ファンが大半であろう。
マルコ・ポーロに命を救われ通訳となる中国人の若者チュー・リンには、中国系イギリス人のマイケル・チョウ。恐らく俳優としてよりも、世界的な高級中華レストラン・チェーン「ミスター・チョウ」の創業社長としての方が有名だ。本作の当時はまだ23歳。童顔ということもあってか、とてもチャーミングで初々しい。そのチュー・リンと恋仲になるアムロイ姫の侍女タイオウには、イェイェ系のフレンチ・ポップ歌手として今もカルトな人気を誇るベトナム系フランス人の女性アイドル、タイニー・ヨン。そういえば、アジア人がまだ少なかった当時のヨーロッパ産娯楽映画にあって、白人がメイクを施してアジア人のフリをすることがまかり通っていたわけだが、本作では意外にも本物のアジア人が多数キャスティングされている。まあ、確かにクビライとかクダイとかモンカとかは白人俳優が演じているし、モンゴル兵役のスタントマンたちも基本的に白人ばかりなのだが、しかしその一方で一般庶民役のエキストラにはかなりの数のアジア人が動員されているのだ。恐らく、フランス在住のベトナム系ないしインドネシア系の移民を調達したのかもしれない。
日本ではリアルタイムで劇場公開されたものの、今のところビデオソフト化された形跡は全くなし。それは海外でも同様で、ゆえに長いこと世界中のイタリア映画マニアの間でも幻の映画とされてきた。それが'23年にアメリカとドイツでまさかのブルーレイ化。しかも4Kレストア版である。まあ、古い映画なうえに恐らくオリジナルネガではないため、さすがにツルツルピカピカとまではいかないが、それでもまずまずの高画質と言えよう。で、実は本作、104分のオリジナル・イタリア語版とは別に、同じ尺数のインターナショナル版と95分に短縮されたアメリカ公開版の2種類の英語バージョンが存在するのだが、筆者が所有するアメリカ盤ブルーレイに収録されているのは前者。このインターナショナル版が貴重なのは、メインキャラの声を役者本人たちがアフレコしている点だ。
ご存知の通り、昔のイタリア映画は現場で一切の音を拾わず、全てアフレコで処理されていた。そのうえ、演じる役者本人ではなく吹替専門の声優にやらせるのが一般的。そうした中で珍しく、本作のインターナショナル版はロリー・カルホーンや谷洋子、マイケル・チョウらが自分自身の声を充てている。ただし、これがアメリカ公開版となると話は別で、配給会社アメリカン・インターナショナル・ピクチャーズがアメリカ人の声優を使った米国市場向けの英語吹替版を新たに制作。というのも、イタリアで作られた英語吹替版はセリフの言葉遣いや声優の発音がアメリカ式ではないことが多いため、本作に限らずしばしばアメリカの観客向けに別途作り直す必要が生じたのである。本作の場合だと、谷洋子の英語が思いっきり日本語訛り丸出しなため、恐らく使い物にならないと判断されたのではなかろうか。
評価(5点満点):★★☆☆☆
参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(2.35:1)/1080p/音声:2.0ch DTS-HD Master Audio/言語:英語/字幕:英語/地域コード:A/時間:104分/配給会社:Kino Lorber/Unidis Jolly Film
特典:映画評論家ティム・ルーカスによる音声解説/オリジナル劇場予告編
by nakachan1045
| 2026-02-04 20:54
| 映画
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