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なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画&音楽レビュー日記
by なかざわひでゆき
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「Get Mean」 (1975)

「Get Mean」 (1975)_f0367483_11351715.jpg
監督:フェルディナンド・バルディ
製作:トニー・アンソニー
製作総指揮:テレンス・マクガヴァーン
      C・B・セルニック
原案:トニー・アンソニー
脚本:ウルフ・ローウェンタール
   ロイド・バティスタ
撮影:マリオ・ペリーノ
音楽:フランコ・ビクシオ
   ファビオ・フリッツィ
   ヴィンチェ・テンペラ
出演:トニー・アンソニー
   ロイド・バティスタ
   ラフ・バルダッサーレ
   デヴィッド・ドレイヤー
   ディアナ・ロリス
   ミルタ・ミレール
   ホルヘ・リゴー
イタリア・アメリカ合作/90分/カラー作品




マカロニ・ウエスタンのブームが今まさに終わりを迎えんとする、末期も末期に登場した珍作中の珍作西部劇である。セルジオ・レオーネ監督の『荒野の用心棒』('64)と『夕陽のガンマン』('65)の相次ぐ世界的な大ヒットによって、瞬く間に大量生産されるようになったイタリア産西部劇=マカロニ・ウエスタン。ブームの全盛期には年間70~80本ものマカロニ・ウエスタンが作られていたものの、しかし'70年代に入ると半分以下に減少。テレンス・ヒルとバド・スペンサーのコンビを主演に据えたスラップスティック・コメディ『風来坊』('70)シリーズや、三船敏郎扮する日本のサムライがアメリカ西部で大暴れするイースト・ミーツ・ウェスト的な『レッド・サン』('71)など、作り手側もあれやこれやと新規路線を模索するもジャンルの人気衰退は止まらず、'74年には年間製作本数もたったの9本にまで落ち込んでしまった。

まさしくマカロニ・ウエスタン消滅の危機!まあ、実際は'78年頃まで細々と作られ続けるわけだが、いずれにせよジャンルとしては既にオワコン、ちょっとやそっとのことでは世間から見向きもされなくなってしまう。だからなのだろう、この頃になると西部劇と香港カンフー・アクションを融合したり、西部劇とブラックスプロイテーションを融合したりと、もはや目立ってナンボとしか思えない荒唐無稽なマカロニ・ウエスタンまで登場するわけだが、珍しくアメリカ資本の投入された本作『Get Mean』('75・日本未公開)もそのひとつ。なにしろ、西部開拓時代に当たる19世紀を舞台にしているはずなのに、なぜだか当時すでに消滅したはずの北欧のヴァイキング(でも名前は明らかにラテン系)とムスリムのムーア人が勢力争いを繰り広げ、さらには悪霊だの呪いだの闘牛だのシェイクスピア狂のせむし男だのが入り乱れるんですから(笑)!もはや荒唐無稽を通り越して支離滅裂。それゆえなのか、劇場公開当時は全くの不入りで赤字を出してしまい、批評的にも決して評価の高い映画ではないのだが、しかしこれがなかなかどうして意外と出来は悪くない。

大西部の荒野を駆け抜ける一頭の暴れ馬。縄に繋がれ引きずられている男は、流れ者の凄腕ガンマン「よそ者」(トニー・アンソニー)である。彼がどこからきて、なぜ暴れ馬に繋がれているのか、劇中では一切の説明なし。やがて、町の入り口に怪しげなミラーボールの置かれたゴーストタウンへ差し掛かると、いきなり暴れ馬はのたうち回って死んでしまう。ようやく解放されて自由になり、近くのあばら家へ逃げ込んだ「よそ者」。そこではジプシーの人々が彼の到着を待ち構えており、5万ドルの報奨金と引き換えに高貴な姫君エリザベス・マリア・デ・ブルゴス(ディアナ・ロリス)を祖国スペインへ送り届けるよう依頼される。そこへ乱入してきたヴァイキングの暗殺団を一網打尽にした「よそ者」は、あんたが本物の姫君だとは全く思ってないし、そもそも俺にとってはどうでもいいことだが、しかし金を頂くからにはちゃんと約束を守ってやる、と言ってエリザベスを伴ってスペインへと渡る。

到着したスペインでは統治者のムーア人と侵略者のヴァイキングが熾烈な勢力争いを繰り広げていた。とんでもねえ野蛮な未開国に来てしまった!さっさと報奨金を頂いて文明国アメリカへ帰ろう!と考えた「よそ者」だが、しかしあっけなくヴァイキングに捕まってしまう。エリザベスは捕虜として城へ連れ去られ、「よそ者」は砂漠のド真ん中で逆さづりにされ死ぬまで放置されることに。しかしそこへ、姫君を待ち受けていたムーア人の女性モレリア(ミルタ・ミレール)が仲間と共に現れ、瀕死の「よそ者」を救い出してくれる。とりあえずお前らの姫君は送り届けた。俺の役目は済んだはずだから、約束の報奨金をよこせ!とムーア人たちに迫る「よそ者」。しかし、ムーア人の財産である「ロドリゴの財宝」はヴァイキングに占拠された城のどこかに隠されており、それを取り戻さなければ「よそ者」への報酬も支払えないのだ。

しかも、秘宝の隠し場所を知る将軍エミール(ホルヘ・リゴー)は、ヴァイキングとの戦いで重傷を負って死亡。亡くなる間際にエミールが残したヒントは山頂の古い寺院の名前だ。そこに財宝の在処を示す手掛かりがあるようだが、しかし正当な継承者である姫君エリザベスしか知る資格がないという。そこで、城へ乗り込んでヴァイキングの王ディエゴ(ラフ・バルダッサーレ)と対峙した「よそ者」は、手鏡やビーズなど「アメリカの財宝」とエリザベスを交換しようと申し出るも、この俺様をバカにするつもりか!とディエゴが激怒したため交渉は決裂。しかし、ディエゴの腹心であるせむし男ソンブラ(ロイド・バティスタ)が主君を裏切り、財宝が見つかった暁には「そよ者」とソンブラの2人で山分けするという条件で、城に囚われの身となっているエリザベスを解放する。

山頂の古い寺院を訪れた「よそ者」とエリザベスとソンブラの3人。ところが、僧侶によると財宝の在処を知るためにはまず「死の裁判」と呼ばれる命がけの試練を克服せねばならないという。か弱い女性のエリザベスには無理かもしれない。そう考えた「よそ者」は代わりに自分が「死の裁判」を受けることにする。それは悪霊による過酷な魔術の洗礼。なんとか最後まで試練を乗り越えた「よそ者」だったが、しかしその結果、黒人に姿を変えられて放り出される。しかも、これを手にした者は呪われるという邪悪なペンダント「サソリの棘」という嬉しくないオマケ付きで。訳が分からず困惑する「よそ者」を恐れたヴァイキングらは、呪いを解くために彼を神への生贄として捧げることにするのだが、しかし財宝の行方を巡ってヴァイキングたちが仲間割れするようになり…?

いやあ、なんだか良く分からんお話ですな(笑)!時代設定も状況設定もメチャクチャなら、ロジックや整合性をまるっきり無視したストーリー展開だって意味不明。ジャンルもグチャグチャである。とりえず、オープニングとエンディングに登場する「魔法の水晶玉」ならぬ「魔法のミラーボール」から察するに、もしかすると本作は主人公の「よそ者」が知らぬ間に異世界へ迷い込んでしまった…という設定なのかもしれない。もしくはタイムスリップをしてしまったのか。いずれにせよ、これは西部劇を装ったインディ・ジョーンズ的アクション・アドベンチャーであり、なおかつソード&サンダル的なスペクタクル史劇でもあり、ついでにアレハンドロ・ホドロフスキー的な不条理映画でもある。よくぞこの内容でゴーサインが出たもんだ。

そんな本作の生みの親は、原案とプロデュースを兼ねた主演スターのアメリカ人俳優トニー・アンソニー。もともと親友の映画監督ソール・スウィマーとアメリカでインディペンデント映画を撮っていたアンソニーは、イタリア滞在中に当時まだアメリカへ上陸していなかったセルジオ・レオーネ監督の『荒野の用心棒』を見て、これから間違いなくマカロニ・ウエスタンのブームが来るであろうと確信。以前より知遇のあった大物ビジネスマン、アラン・クライン(ローリング・ストーンズやビートルズのマネージャー)に連絡して出資を取り付け、ミケランジェロ・アントニオーニの助監督だったルイジ・ヴァンツィの演出で西部劇『暁の用心棒』('66)をイタリアで撮影する。もともとプロデュースだけを手掛けるつもりというアンソニーだが、しかしヴァンツィ監督直々のご指名で主演も兼ねることに。これが予想以上の大ヒットを記録したことから、アンソニー演じるやさぐれた流れ者ガンマン「よそ者(ストレンジャー)」を主人公にした続編が次々と作られる。そう、本作はその「よそ者」シリーズの第4弾、結果的にフィナーレを飾ることになった最終作なのだ。

シリーズ前作『The Silent Stranger』('68・日本未公開)では、江戸時代の日本を舞台に原案を書いたアンソニー。さらに自由な発想で主人公「よそ者」の冒険を描いてみよう、そうすればシリーズの将来的な可能性も広がるのではないか?との思惑から、もはや時間も空間も常識も飛び越えた本作の奇想天外なストーリーを考え付いたという。そのシノプシスを具体的に脚色したのが、アンソニーとは学生時代からの親友だった俳優ロイド・バティスタとその友人ウルフ・ローウェンタール。狡猾なせむし男ソンブラが「リチャード三世」に憧れるシェイクスピア・マニアという設定は、本人が大のシェイクスピア・マニアで「リチャード三世」を熱愛するバティスタのアイディアだそうだ。さすがに悪ノリが過ぎるのでは…?と脚本を書きながら思うこともあったというバティスタだが、しかしアンソニーは彼のアイディアを面白がってどんどん取り入れたらしい。

このクレイジーなアメリカ人トリオの考えた支離滅裂なストーリーを演出したのは、日本の時代劇『座頭市』シリーズにインスパイアされた異色西部劇『盲目ガンマン』('71)でアンソニーと意気投合したフェルディナンド・バルディ。脚本のデタラメさなど全く意に介することなく、最初から最後まで有無を言わさぬ勢いで突っ走っていくバルディ監督の強気な語り口は、少なくとも本作においては大正解だったと言えよう。しかも、その荒唐無稽をパロディ的な笑いで誤魔化したりせず、それこそ真正面から臆することなく大真面目に取り組むという潔さも、本作のストーリーにある種の説得力を与えている。これでもかと火薬を使いまくったド派手なクライマックスも見応えあり。すごい数のエキストラだな!と思ってよーく見たらマットペイントのイラストだった!なんて節約術もそこかしこに散見されるが、それでもなお自転車操業的に作られた超低予算映画(週に1度、プロデューサーが搔き集めた制作費を現場へ運んでいたらしい)とは思えぬほど見栄えが良いのは立派だ。

正義だの理想だの義理人情だの、悪いけど一切興味も関心もございません!とにかく金!なにはあっても金!金さえ貰えりゃ何でもしまっせ!という不良ガンマン「よそ者」を演じるトニー・アンソニーの、まことに意地汚くも狡猾で抜け目のないアンチヒーローぶりがまたアッパレ(笑)。日本だと勝新太郎あたりが好みそうな役柄ですな。自らが生み出したシェイクスピア好きのせむし男ソンブラという異色キャラを、これでもかと言わんばかりのオーバーアクトで楽しげに演じるロイド・バティスタも好感触。ヴァイキング王ディエゴ役のラフ・バルダッサーレは、ラルフ・ボールドウィンの変名でも知られる悪役スターだ。また、『美女の皮をはぐ男』('61)のディアナ・ロリスに『ゾンビの怒り』('72)のミルタ・ミレールと、スパニッシュ・ホラー映画ファンには馴染み深い女優陣のキャスティングも嬉しい。

日本では劇場未公開・テレビ未放送、そのうえビデオソフトでの発売もなしという不遇な扱いの本作。アメリカでは劇場公開が1週間ほどで打ち切られ、3年後に公開されたイギリスでも話題にならずと、海外でもパッとしなかったことから「よそ者」シリーズはこれを以って終了することに。3作目までは北米の配給元ワーナーが幾度となくビデオソフト化してきたが、しかしインディペンデントで配給された本作は'80年代にイギリスでVHSが出たきりだったようだ。しかし'15年になってアメリカのBlue Undergroundレーベルが2K解像度のデジタル修復版をブルーレイでリリース。これが、マットペイントの境目まで肉眼で識別できるほどの高画質に仕上がっている。1.0chモノラルながらも重量感のある音声トラックも上出来。トニー・アンソニーやロイド・バティスタの最新インタビューを含んだ、ボリューム感のある特典コンテンツも有難い。

評価(5点満点):★★★★☆


参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(2.35:1)/1080p/音声:1.0ch DTS-HD Master Audio/言語:英語/字幕:英語/地域コード:ALL/時間:90分/発売元:Blue Underground
特典:俳優トニー・アンソニーと俳優ロイド・バティスタ、製作総指揮ロナルド・J・シュナイダーによる音声解説/俳優トニー・アンソニーのインタビュー('15年制作・約23分)/俳優ロイド・バティスタのインタビュー('15年制作・約12分)/製作総指揮ロナルド・J・シュナイダーのインタビュー('15年・約10分)/フェルディナンド・バルディ監督のインタビュー('07年制作・約8分)/未公開シーン集(約9分)/オリジナル劇場予告編(アメリカ公開版・フランス公開版)/ラジオ・スポット集/ポスター&スチル・ギャラリー



by nakachan1045 | 2026-02-09 16:39 | 映画 | Comments(0)

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