なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧
「アイアン・ウォリアーズ/魔界剣士」 Ator il guerriero di ferro (1987)

製作:マウリツィオ・マッジ
製作総指揮:オヴィディオ・G・アッソニティス
脚本:スティーヴン・ルオット
アル・ブラッドレイ(アルフォンソ・ブレスチア)
撮影:ウォリー・ジェントルマン
プロダクション・デザイン:フランク・ヴァノリオ(フランコ・ヴァノリオ)
衣装:ヴァレリー・ヴァレンザ(ヴァレリア・ヴァレンザ)
剣術:フランク・ダディ(フランコ・ダディ)
音楽:カルロ・マリア・コルディオ
出演:マイルズ・オキーフ
サヴィーナ・ゲルサック
エリザベート・カザ
イリス・ペイナード
ティム・レイン
ティツィアナ・アルティエリ
フランク・ダディ(フランコ・ダディ)
ジョシー・コッピーニ
マルコム・ボルグ
コンラッド・ボルグ
イタリア・オランダ合作/87分/カラー作品
イタリア産C級娯楽映画の帝王ジョー・ダマートが生み出したヒロイック・ファンタジー映画「英雄アトー」シリーズの第3弾である。アーノルド・シュワルツェネッガーの出世作『コナン・ザ・グレート』('82)の世界的な大ヒットによって、時ならぬヒロイック・ファンタジー映画のブームが訪れた'80年代。ロジャー・コーマン製作の『勇者ストーカー』('83)に『SFカインの剣』('84)などなど、コナン人気に便乗した低予算映画が次々と量産されたわけだが、中でも特に積極的だったのはイタリア映画界である。
なにしろ、サイレント映画の時代からこのジャンルはイタリア映画の十八番だ。しかも、かつてスティーヴ・リーヴス主演の『ヘラクレス』('58)の大成功を契機に、ソード&サンダル映画(もしくはペプラム)と呼ばれるイタリア産ヒロイック・ファンタジー映画が世界中で大ブームとなったこともあった。商魂逞しいイタリア映画人にとっては、文字通り絶好のビジネスチャンス到来である。ルイジ・コッツィ監督の『超人ヘラクレス』('83)にルチオ・フルチ監督の『SFコンクエスト』('83)、ハリウッド資本の入った『ハンドラ』('83)などのイタリア産ヒロイック・ファンタジー映画が矢継ぎ早に登場したわけだが、その先陣を切ったのがジョー・ダマート監督の『世紀末戦士アトー/炎の聖剣』('82)だった。
邪悪な支配者に故郷の村を滅ぼされたうえ、愛する婚約者まで連れ去られた最強の剣士アトー(マイルズ・オキーフ)が、その復讐を果たすべく妖しい魔女や醜いゾンビ軍団、巨大スパイダーなどに立ち向かっていく。これが期待通りの成功を収めたことから、ダマート監督は再びオキーフをアトー役に起用した続編『世紀末戦士アトーⅡ/大魔王ソブの牙城』('83)を発表。これも興行的にはまずまずの結果を残したのだが、しかし本家「コナン」シリーズの第2弾『キング・オブ・デストロイヤー/コナンPART2』('84)が思いのほかパッとせず。ブームの終息しつつあることを直感したダマートは、ヒロイック・ファンタジー映画のジャンルにさっさと見切りをつけて、『ニューヨーク1997』('81)や『マッドマックス2』('81)に影響された世紀末アクション映画へ注力することに。そこで、当時ディノ・デ・ラウレンティスから「コナン」シリーズの映画化権を買い取ろうとしながらも頓挫していたイタリアの映画製作者オヴィディオ・G・アッソニティスが、代わりに「英雄アトー」シリーズの第3弾を作ることにしたというわけだ。
善良な魔女ディーヴァ(イリス・ペイナード)によって最強の剣士となるべく育てられている双子の兄弟アトー(マルコム・ボルグ)とトロガー(コンラッド・ボルグ)。ある日、まだ幼い兄弟が2人だけで遊んでいたところ、邪悪な魔女フェドーラ(エリザベート・カザ)によってトロガーが誘拐されてしまう。どちらも強力な魔術を操る魔女姉妹のフェドーラとディーヴァ。かつてフェドーラの魔手に堕ちた王国が、ディーヴァによって解放されたばかりだった。王国の次なる統治者の誕生を予感したディーヴァは、アトーとトロガーのどちらかをその守護者に指名するつもりだった。少年を返すよう要求するディーヴァだが、しかしフェドーラは断固として拒否。そればかりか、王国を再び我が物にすると息巻く。魔女たちの裁判でフェドーラは直ちに有罪とされ、その強大な魔力を奪われたうえ魔界にて18年間幽閉されることとなった。
それから18年後。王位継承者であるジャンナ姫(サヴィーナ・ゲルサック)が18歳の誕生日を迎え、王宮では祝いの宴が盛大に開かれていた。そこへ現れたのが、幽閉生活から解放された邪悪な魔女フェドーラ。たちまち宴会に混乱をもたらしたフェドーラは王国に呪いをかけ、彼女によって闇の仮面騎士となったトロガー(フランコ・ダディ)が殺戮を繰り広げる。父親の国王(ティム・レイン)を含む王族は皆殺しにされてしまった。まさに危機一髪のジャンナ姫を救ったのは、善良な魔女ディーヴァによって最強の剣士へと育てられた英雄アトー(マイルズ・オキーフ)。彼はフェドーラが化けた若く美しい毒婦(ティツィアナ・アルティエリ)の色香に惑わされ、危うく殺されそうになったところをディーヴァに救われ、彼女の導きでジャンナ姫の救助に駆け付けたのだ。
仮面戦士トロガーと死闘を演じたアトー。もう一歩のところで敵は忽然と姿を消してしまった。あの仮面戦士は何者なのか。その正体を確かめるべく王宮へ向かったアトーだったが、国王亡きあとの王国はフェドーラの手中に堕ちていた。ジャンナ姫の提案によって、彼女の生まれ故郷ネイロフで味方の軍隊を集めることにしたアトー。ところが、ネイロフへ着いてみると住民は皆殺しにされていた。そこへ襲来した敵の軍隊から身を隠しつつ、ディーバの声に誘われて洞窟の奥深くへと辿り着いたアトーとジャンナ姫。そこで待っていたディーヴァからアトーは、仮面戦士の正体が双子の兄弟トロガーであると知らされて衝撃を受ける。邪悪なフェドーラを倒して、その呪いからトロガーを解放するには、とある絶海の孤島に隠された魔法の箱が必要だ。そこでアトーとジャンナ姫は、決死の覚悟で孤島へと向かうのだったが…?
いやあ、もしかするとシリーズ中で最も出来の良い作品かもしれませんな、これは。もちろん、本作がC級レベルの超低予算ヒロイック・ファンタジーであることは間違いない。そこは1作目から一貫して変わらず。ひとまず製作総指揮がオヴィディオ・G・アッソニティスということもあって、シリーズ中では最も予算がかけられているらしいのだが、まあ、そうは言ってもたかが知れているだろうという印象だ。過去シリーズの設定をいったんリセットして、新たに一からストーリーを再構築した脚本も、正直なところ凡庸で退屈極まりない。明らかに尺稼ぎだろ!と突っ込みたくなるような、無駄で意味のないイメージショットも多し。監督はC級スペース・オペラの迷作『スペース・ウルフ -キャプテン・ハミルトンー』('77)や、『キャプティブ・プラネット/恐怖の惑星競売』('78)などで悪名高いポンコツ映画監督アル・ブラッドレイことアルフォンソ・ブレスチア。さもありなんといったところか。
ただし…である。これがなんというか、見栄えだけは決して悪くないのだ。いや、むしろやけに良いと言えよう。ロケ地はマルタ共和国のマルタ島とゴゾ島。新石器時代の巨石神殿ジュガンティーヤにムナイドラ神殿、ハル・サフリエニの地下墳墓などなど、撮影に使われた古代遺跡や鍾乳洞の神秘的な美しさが上手いこと活かされている。しかも、凝りに凝りまくったカメラワークは極めて前衛的かつお洒落。まるで'80年代当時のミュージック・ビデオみたいだ。そういえば、ジャンナ姫のニューウェーヴなヘアメイクもトーヤ・ウィルコックスっぽい。女性陣のセクシーなきわどいコスチュームだって古代ギリシャ×ニューウェーヴといった感じである。撮影監督は『2001年宇宙の旅』('68)や『ワン・フロム・ザ・ハート』('81)の特殊視覚効果に参加していたウォリー・ジェントルマン。本来は特殊効果マンであるはずの彼が、なぜ撮影を担当したのかは定かでないものの、いずれにせよスタイリッシュで洗練された映像美は彼の功績であろう。間違ってもブレスチアの手柄ではないはず。シリーズの生みの親ジョー・ダマートも、残念ながらこういう芸術的なセンスには恵まれていない。うっかり背景に車やトラックが写り込んでしまうという痛恨のミスこそあれど、ひとまずビジュアル的には本作がシリーズ中のベストである。
また、プロセス・スクリーンを用いた魔女たちの裁判シーンの演出は『スーパーマン』('78)、転がる巨大な石の玉は『レイダース/失われたアーク』('81)、縄で出来た釣り橋が敵に切り落とされるシーンは『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』('84)、善良な魔女ディーヴァが氷に閉じ込められる場面は『エクスカリバー』('81)といった具合に、大ヒット映画のオマージュ(というかパクリ)がふんだんに盛り込まれているのも見どころ。そういえば、ジャンナ姫の誕生パーティに魔女フェドーラが現れて呪いをかけるシーンは、思いっきり「眠れる森の美女」の焼き直しですな。
主人公アトー役は、前2作に引き続いてアメフト選手出身のハリウッド俳優マイルズ・オキーフ。こちららも過去作品とはガラリとイメージを変え、髪を後ろでキュッと結わえてサムライのようにストイックで寡黙で精悍な剣士を演じてカッコ良い。ヒロインのジャンナ姫役には『ザ・トレイン』('89)や『ブラッド・バイター』('89)など、当時のオヴィディオ・G・アッソニティスのプロデュース作品には欠かせなかったスロヴェニア人女優サヴィーナ・ゲルサック。この人は演技力もあれば雰囲気もあるクールな役者で、なかなかジャンル系低予算映画専門にしておくには勿体ない逸材だったが、残念ながら作品に恵まれなかった。邪悪な魔女フェドーラ役のエリザベート・カザは、ワレリアン・ボロフチックの『邪淫の館・獣人』('77)やティント・ブラスの『パプリカ』('91)に出ていたハンガリー人女優。また、ソード&サンダル映画ブームの時代から活躍するスタントマン、フランコ・ダディが、鉄仮面を被ったアトーの双子兄弟トロガー役を担当している。
実は1985年に撮影されたものの、暫くお蔵入りになっていたという本作。'87年1月にトランス・ワールド・エンターテインメントの配給で全米公開されたのが最初で、以降はヨーロッパやアジアなどの各国でビデオ・リリースされている。本国イタリアでもビデオ発売のみで劇場公開はナシ。どれほど利益がでたのか定かではないが、翌年には生みの親ジョー・ダマートが新たにエリック・アラン・クレイマーをアトー役に起用し、シリーズ第4弾『魔宮神話レジェンド・オブ・サンダー』('88)を発表している。なお、日本ではレンタルビデオ全盛期にVHSで出たきりの本作だが、'10年にはイタリアで初めてDVD化され、'19年にはアメリカでブルーレイも出ている。MGMの倉庫に眠っていたフィルム素材を使って、新たにHD画質でレストアされたという本編は部分的に若干の経年劣化が見受けられるものの、しかし全体的にはかなりクリアで滑らかな高画質。ただし、ステレオ音声は微かなヒスノイズが全編に渡って残されており、少なからず気になることは否めないだろう。
評価(5点満点):★★★☆☆
参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/1080p/音声:2.0ch DTS-HD Master Audio/言語:英語/字幕:なし/地域コード:A/時間:87分/発売元:Scorpion Releasing/MGM
特典:アメリカ版劇場予告編
by nakachan1045
| 2026-02-16 18:44
| 映画
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